海上保安レポート2003
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治安を守るために


5 TAJIMA号事件への対応

 平成14年4月7日、台湾沖の公海上を姫路港に向け航行中のパナマ籍タンカー「TAJIMA(以下、「T号」という。)」から海上保安庁に対して、「日本人船員が行方不明になる事件が発生し、その船員は、フィリピン人船員に殺害された疑いが濃い」との通報がありました。

 海上保安庁は、船長からの要請に基づき、パナマ政府の了解を得てT号に海上保安官を派遣し、T号の姫路入港までの間、巡視船による伴走警戒を実施しました。その後、パナマ政府から外交ルートを通じて国際捜査共助*1の要請を受けたことから、海上保安庁では、共助に必要な証拠の収集活動等を実施しました。

 また、姫路入港後、T号は船長権限により被疑者を船内に軟禁したまま錨泊している状態であったことから、これをできるだけ早期に解消するために、国土交通省、外務省等関係機関と協力の上、パナマ政府に対して、我が国の法制度を説明するとともに、速やかに我が国の国内法にのっとった被疑者の身柄引渡請求を行うよう、働きかけを行いました。

 それを受けて、5月14日には、パナマ政府から被疑者の仮拘禁請求がなされ、翌15日、被疑者の身柄を拘束しました。最終的にはパナマ政府からの身柄引渡請求に基づき、9月6日、被疑者の身柄をパナマ官憲に引き渡しました。

 この事件のように公海上の外国籍船において外国人により日本人が殺害された場合、我が国の刑法の適用がないため、刑事裁判管轄権を持つ国からの要請を待たずに我が国が被疑者の身柄を拘束することはできません。本件の場合、T号の旗国であるパナマが唯一、刑事裁判管轄権を持つ国でした。

 海上保安庁では、国土交通省、法務省、外務省とともに、このような事件が再度発生した場合、より迅速かつ適切に対処できるよう、検討を行いました。その結果、関係省庁及び船社などの間の連絡協調体制を整備することや、このような事件に対する対策の必要性について、国際海事機関(IMO)において問題提起等を行うこととしました。

 なお、本件のように公海上の外国籍船上などで殺人をはじめとする一定の重大な犯罪の被害を日本人が受けた場合、我が国の刑法も適用できるようにするため、第156回国会に刑法の一部を改正する法律案が提出されました。

TAJIMA
TAJIMA

*1 国際捜査共助 刑事事件捜査に必要な証拠を外国に提供し、又は外国からの証拠の提供を受けること。
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