2.警備活動の展開

1)警備活動の課題

 平成13年9月に発生した米国同時多発テロ事件は、対岸の火事ではなく、我が国においても同様の事件が発生しないという保証はありません。このため、海上においても国際テロ等の脅威へ備えることが必要です。
 このような状況下、平成14年5月31日から開催される「2002年ワールドカップサッカー大会」に際しては、関係省庁で構成する「2002年ワールドカップサッカー大会開催準備問題に関する安全対策部会」において、ワールドカップにおける最大の脅威はテロであることが確認されており、フーリガン対策と共に重要な課題となっています。
 このように、海上保安庁では、海上におけるテロや海上紛争等に備え、海上における公共の安全の確保と秩序を維持するために最大限の努力を行っています。

原子力発電所の周辺海域を警戒する巡視船艇
原子力発電所の周辺海域を警戒する巡視船艇

2)警備活動の現状

 海上保安庁では、米国同時多発テロ事件発生以後、原子力発電所等重点警備対象施設への巡視船艇・航空機による警戒など警備強化を図っています。また、外国艦船の我が国への寄港や核物質の海上輸送等に際し、所要の警備を実施しています。
 これらの警備を適確に実施するため、全国に警備実施強化巡視船*110隻を配置し、他の巡視船艇・航空機とともに警備実施訓練・各種研修を行うなど、警備実施体制の強化に努めています。また、爆発物の処理を含む船舶に対するテロ、船内暴動等シージャック類似事案、米国において発生した「炭疽菌」が封入された郵便物が郵送される事案への対応など、高度な知識と技術が要求される事案には、特別な訓練や研修を受けたテロ対処部隊(特殊警備隊や特殊救難隊)を投入することとしています。

米空母キティホークの横須賀出港に伴う警戒
米空母キティホークの横須賀出港に伴う警戒

*1警備実施強化巡視船
テロ行為および極左暴力集団の妨害行為の未然防止や市民デモの事故・暴動化を防止するため、必要な装備を備え、部隊として機能的に活動する巡視船のこと。主に集団規制方法の知識や技能を身につけるため、逮捕術訓練、ゴムボートを使用した規制訓練、火炎瓶対処訓練などを行っている。



3)今後の取り組み

 平成14年5月31日から6月30日までの31日間にわたり、日本及び韓国で2002年ワールドカップサッカー大会が開催されます。大会期間中には、航空機のみならず、船舶の利用も相当程度予想され、このような機会に乗じたシージャックや爆破等のテロ、フーリガンによる暴動等の発生が懸念されています。
 海上保安庁では、予想されるこれらの脅威の発生を未然に防止し、万が一発生した場合には的確に対処するため、巡視船艇・航空機等の即応体制の確保、旅客船への海上保安官の乗船(これを「警乗」と言います。)を行います。また、旅客船事業者等に対しては、テロ行為等の未然防止対策や通報連絡体制を確立するよう指導するなど、大会期間中の警戒強化を行います。さらに、韓国海洋警察庁との間で協力体制が構築されており、大会期間中の海上警備に万全を尽くすこととしています。
 なお、テロ対策等についても、引き続き国内外の情勢に応じた警備を行っていくこととしています。

テロ対処部隊
テロ対処部隊

戻る 次へ
トップページへ戻る