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1.海洋情報部誕生
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日本人の手による日本第1号の海図 (岩手県釜石港)
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海洋情報部の前身である「水路部」は、明治4年(1871年)、我が国の海運の発展と独立を守るため、海洋を調査し、海図や航海用書誌を提供する機関として当時の海軍に設置された「水路局」に端を発しています。
当時、海図を作成するために海の深さを測ることは、大変な作業でした。現在のようにGPS等によって正確かつ簡単に自分の位置を知ることができなかったため、地上の目標物や天体を測って自らの位置を決め、ロープの先に鉛の錘(レッド)を付け、海底に下ろして海の深さを測っていました。こうした気の遠くなるような地道な測量作業を続け、約50年を要して日本周辺の海図を整備したのです。
また、安全な航海のためには、水深だけではなく、海流や潮流、潮汐といった海象を把握する必要があります。
水路部では、こうしたニーズにも応えるため、明治のはじめから精力的に海洋観測を続け、時には自ら観測機器を開発し、航海の安全と海洋科学の発展に寄与してきました。まさに、我が国の海洋調査の先駆者であったわけです。
水路部は、こうして130年もの間、海を調査し、多くの情報を収集してきました。また、国内外の海洋調査機関から集めた多くの海洋調査データを蓄積・提供してきました。
しかしながら、近年の社会経済情勢などの変化を受けて、海洋調査に関わるニーズは、船舶の航行安全のみならず、昨今の海洋環境の悪化に対し適切な対策を打ち出していくために必要な調査や地震などの自然災害から人々を守るために必要な調査など、その幅が広がってきています。また、近年マリンレジャー人気の高まりやその多様化が進む中で、海洋情報のユーザーが貨物船や漁船などの「プロ」から一般市民にまで広がってきています。こうした状況をふまえて、水路部は、IT技術を活用しながら海洋調査と海洋情報の提供の体制強化を図ることを目的として、新しい組織へと生まれ変わることにしたのです。
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測深用ロープとレッド
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