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 海上保安庁長官からのメッセージ

 この1年を振り返ると、平成13年9月には米国同時多発テロ事件、12月には九州南西海域不審船事案と、国民の皆さんが改めて治安問題に関心を寄せるような大きな出来事が続けて発生しました。

 米国同時多発テロ事件では、民間の航空機を手段として使ったテロにより、数多くの尊い命が奪われました。
 これに対し、米国艦船や海上自衛隊の艦船がインド洋周辺に向けて出動しました。海上保安庁では、これらの艦船の出港時に厳重な警備を行いました。
 また、我が国には、テロ攻撃の対象となりうる米軍基地や原子力発電所などが臨海部に多数立地しています。このため、海上保安庁は、その警備を強化するとともに、一般船舶に対してテロに関する様々な情報提供を行うなど、最大限の努力をはらい、現在も継続しています。

 九州南西海域で発生した不審船事案では、防衛庁から不審船情報を入手後、直ちに巡視船艇・航空機を動員して、不審船を追尾し停船を求めました。不審船はこれを無視して逃走を続け、最後には不審船からの攻撃に対して巡視船が正当防衛のための射撃を行うに至り、その後、不審船は爆発・沈没しました。この事案では、不審船から多数の銃弾を受け職員3名が負傷しましたが、現場の海上保安官は非常に困難な状況の下で、国民の期待する任務を適切に遂行したと私は考えています。
 極度の疲労と緊張の中、荒れ狂う大シケの海で対応にあたった海上保安官を誇りに思うとともに、これも海上保安官の日頃の訓練と実動経験の成果と確信しています。

 海上保安庁は、海上における国民の生命や財産を保護し、犯罪等を抑止することを国民の皆さんから負託されています。このため、海上保安庁が取り組むべき課題は、治安の維持や海上交通の安全確保、海難の際の救助、海上防災・海洋環境の保全など多岐にわたっています。その中でも、先ほど述べましたテロ対応や不審船対策とともに、密輸、密航、海賊など、海を通じ、また、海を舞台として行われる組織犯罪の抑止は、海上保安庁の最も重要な課題の一つです。

 そこで、今回のレポートでは、特集として「海の治安は海保におまかせ!」を取り上げ、海上保安庁が海の治安を維持していくうえでの課題や取り組みについてまとめました。また、水路部が130年の歴史と伝統を活かしながら、より政策遂行にふさわしい姿に変身すべく、今年4月に海洋情報部として生まれ変わりました。このため、このレポートの、もう一つの特集として「海洋情報部に注目!」を設定しました。今回の組織改編が何を狙いとしており、その業務が今後どう変わっていくのか、ということについてまとめました。
 一方、本編では、平成13年に海上保安庁が目標達成のためにどのように取り組んできたのかを紹介するとともに、今後の課題解決のための取り組みやその方向性を明らかにしています。

 今後とも、厳しい自然環境や激動する社会経済情勢の下で、国民の安全・安心な生活を守るため昼夜を問わず任務を遂行する1万2,000名余の海上保安官を応援していただきたいと思います。

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