海上保安レポート 2007

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


特集 海洋国家「日本」と海上保安庁
〜海洋権益保全への取組み〜

はじめに

1.これが現場第一線

2.海洋調査に迫る


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


海上保安官を目指す


語句説明・索引


図表索引


資料編


本編 > 治安の確保 > 5. 海賊対策
5. 海賊対策
目標
 マラッカ・シンガポール海峡を含む東南アジア周辺海域は、我が国の主要な海上輸送路であり、これらの海域における海賊及び海上武装強盗(以下、単に「海賊」という。)対策は、我が国への物資の安定供給の観点から極めて重要です。
 海上保安庁では、アジア地域における海賊の抑止、未然防止、事案発生時における即応体制の整備を目標としています。平成18年1月、国土交通省と海上保安庁は「海賊等対策会議」を設置し、同年3月、「海賊・海上武装強盗対策の強化について」を取りまとめました。この方針に基づき、海上保安庁では海賊対策の体制強化に努めます。

「海賊・海上武装強盗対策の強化について」に基づく海上保安庁の海賊対策
  1. 平成19年1月に設置した海賊対策室による情報収集体制強化などの国内における対応の強化
  2. アジア海上保安機関長官級会合やアジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)などを通じた各国の海上法執行機関の連携による対応の強化
平成18年の現況
 国際商業会議所国際海事局(IMB)に報告された平成18年の全世界における海賊の発生件数は239件と平成17年より37件減少しています。このうち東南アジアにおける発生件数は122件から88件と減少しており、さらに、マラッカ・シンガポール海峡における発生件数は19件から16件と減少しています。また、日本関係船舶の海賊被害件数は8件と平成17年より1件減少しています。東南アジアにおける海賊発生件数は、引き続き減少傾向で、これは、海上保安庁と沿岸国海上保安機関の連携・協力体制の強化及び沿岸国海上保安機関自らの積極的な取り組みの成果によるものと考えられます。しかしながら、依然として銃器等を使用した武装強盗事件が多発している事に加え、船舶に対するハイジャックや乗組員の誘拐といった凶悪な犯罪が発生しており、さらなる海賊対策が求められています。

■海賊の発生件数
海賊の発生件数

  海上保安庁では、平成19年1月、本庁に海賊対策室を設置し、これまでにも海上保安庁が推進してきた情報収集、分析・提供体制の強化、アジア各国の海上保安機関との連携・協力体制の構築及び沿岸国の海上保安能力の向上といった各種施策を更に強力に推進していきます。(「トピックス12 12. アジアにおける海賊対策、新たな展開へ!」参照。)
  情報提供体制の強化策の一つとして、広く一般に情報を提供するため、海上保安庁ホームページにおいて海賊発生情報の提供を実施しています。
http://www.kaiho.mlit.go.jp/info/anti-piracy/index.htm
  海賊対策についての各国の海上法執行機関の連携については、「本編 - 海を繋ぐ」において詳細に紹介していますので、そちらをご覧下さい。

■地域別海賊発生状況(平成18年)
地域別海賊発生状況(平成18年)

海賊と海上武装強盗の違い

 船舶または船舶内にある人もしくは財産に対する不法な暴力行為、抑留、略奪行為、またはそれらにかかる扇動や脅迫などを行うと、海賊または海上武装強盗となります。
 これらのうち、公海上もしくはいずれの国の管轄権に服さない場所において行われたものを海賊、沿岸国の管轄権内において行われたものを海上武装強盗と言います。

海賊対策連携訓練で留学生が活躍

東アジア海上犯罪取締り研修
▲東アジア海上犯罪取締り研修
 平成19年2月に実施した日本、タイ、マレーシア三カ国による海賊対策連携訓練では、これまで海上保安庁が各国海上保安機関に実施してきた人材育成支援プログラムに参加した人材の活躍が光りました。
 タイ海上警察の連絡担当者は毎年日本において東南アジア各国海上保安機関職員を対象として実施されている「東アジア海上犯罪取締研修」を平成18年11月に受講しており、マレーシア海上警察の連絡担当者は平成15年に当庁巡視船がマレーシアにおいて実施した乗船研修の修了者でした。
 特に海上保安大学校へタイ海事局から留学中であったダンロンキアット・キアトパス研修生は、在学中に習得した日本語のみならず、海上保安に関する知識等を活用し日本側の訓練コーディネーターとして日本とタイの間の連絡調整にあたり、訓練を成功に導きました。この功績が評価され、タイへ帰国する前の平成19年3月、海上保安庁国際刑事課長賞が授与されました。
 この訓練以外でも、アジア海賊対策地域協力協定に基づき、シンガポールに設置された情報共有センターには、海上保安大学校での留学を経験したフィリピン沿岸警備隊職員が勤務しているなど、海上保安庁の人材育成支援は確実に成果をあげてきています。
 海上保安庁では、今後も積極的に東南アジア各国海上保安機関の人材育成支援を推進していくこととしています。

訓練において連絡調整にあたるキアトパス研修生
▲訓練において連絡調整にあたる
キアトパス研修生
国際刑事課長賞を受け取るキアトパス研修生
▲国際刑事課長賞を受け取る
キアトパス研修生
今後の取組み
 海上保安庁では、引き続き、関係機関から収集した情報の分析・提供体制を強化するとともに、アジア諸国の海上保安機関における人材育成や合同訓練により連携・協力関係を強めることでアジア地域全体の海上警察力の向上を図り、海賊の未然防止に努めていきます。
 平成19年度においては(1) 巡視船の東南アジア派遣・寄港にあわせて現地での人材育成を開始、(2) 我が国と複数国との間での連携訓練を実施、(3) アジア海賊対策地域協力協定に基づく情報ネットワークの構築、人材育成プログラムへの協力、(4) 「東南アジアにおける海上セキュリティ・海賊セミナー」を実施する予定です。