海上保安レポート 2007

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


特集 海洋国家「日本」と海上保安庁
〜海洋権益保全への取組み〜

はじめに

1.これが現場第一線

2.海洋調査に迫る


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


海上保安官を目指す


語句説明・索引


図表索引


資料編


本編 > 海を繋ぐ > 1. 国際的な連携・協力のさらなる強化
1. 国際的な連携・協力のさらなる強化

多国間連携

 幅広い分野にわたる海上保安業務を的確に遂行するため、海外関係機関との連携・協力を推進し、アジア・太平洋地域における海上の治安・安全の確保に積極的に貢献しています。

(1)北太平洋海上保安フォーラム

三亜宣言(概要)
 北太平洋海上保安フォーラムは北太平洋地域における海上保安機関が一堂に会し、法執行機関としての連携強化の具体的な方策について協議する会合であり、各機関の長による北太平洋海上保安サミットと実務者による北太平洋海上保安専門家会合で構成されています。
 10月24、25日の両日、中国で第7回北太平洋海上保安サミットが開催され、連携・協力関係を促進するための共同宣言である「三亜宣言」が採択されるとともに、各種共同訓練等のコーディネートのための会合の開催をはじめ、漁業監視、海上セキュリティ等の各分野での連携強化の具体策が決定されました。

第7回北太平洋海上保安サミット
▲第7回北太平洋海上保安サミット

(2)アジア海上保安機関長官級会合

 平成12年、東京にて開催の「海賊対策国際会議」で採択された「アジア海賊対策チャレンジ2000」に基づき、アジア地域における海賊対策を進めてきましたが、加えて、海上テロ対策への取組みが強く求められるようになってきたことをふまえ、平成16年6月に第1回アジア海上保安機関長官級会合が東京にて開催されました。
 本会合は、アジア地域における国際連携を推進することを目的としており、平成18年3月には第2回会合がマレーシアにて開催されました。
 海上保安庁では、今後ともアジア・太平洋の海上保安機関をつなぐ『扇の要』として、連携強化を図っていきます。

(3)アジア諸国と連携した海賊対策

 平成18年度は、アジア各国との海賊対策に関する相互協力および連携の推進・強化を図ることを目的に、マレーシア、フィリピン、インドネシア、インドの各国に巡視船や航空機を派遣し、公海上におけるしょう戒活動や現地海上保安機関等との間で意見交換、情報交換を行ったほか、相手国機関の職員に対する乗船研修、連携訓練を実施し、両機関間の連携・協力関係の強化を図りました。特に平成19年2月には、初めて3か国間における海賊対策連携訓練を、タイ、マレーシア及び我が国との間で実施しました。
 これらの取組みは、平成16年6月の第1回アジア海上保安機関長官級会合で採択された「アジア海上セキュリティ・イニシアティブ2004」に基づくものであり、今後も積極的に取り組んでいきます。
 また、平成18年11月には、平成18年9月に発効したアジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)に基づき、シンガポールに情報共有センター(ISC)が設置され、海上保安庁から職員1名を派遣しております。平成19年2月に同センターとの情報伝達訓練を実施する等海上保安庁は積極的に同センターへの支援を行っています。

3か国(日本、タイ、マレーシア)連携訓練
▲3か国(日本、タイ、マレーシア)連携訓練

(4)海上テロ対策

 平成18年8月には、海洋政策研究財団の支援のもと、東南アジアの海上保安機関を招へいし、海上セキュリティ向上のための海上保安機関の役割を検討する「東南アジアにおける海上セキュリティ対策セミナー」を開催しました。

海上セキュリティ対策セミナー
▲海上セキュリティ対策セミナー

(5)薬物取締り

海上薬物取締セミナー(MADLES2006)
▲海上薬物取締セミナー(MADLES2006)
 平成18年12月、アジアの海上保安機関、薬物取締機関等が我が国に会し、国境を越える国際組織犯罪への対処のため、国連薬物犯罪事務所(UNODC)と共催で「海上薬物取締セミナー(MADLES2006)」を開催しました。このセミナーでは実務者レベルにおける密輸情勢及び各国の取締体制に係る情報交換と取締技術の移転を図り、各国海上保安機関の技術向上に寄与しました。
 また、海洋政策研究財団の招へい事業の一環で、フィリピン麻薬取締庁の長官と海上保安庁長官の間で日比両国における薬物犯罪の実態及びその取締状況について意見交換を行いました。フィリピンは我が国の麻薬の仕出国の一つであり、薬物取締りに関する両国取締機関の相互理解及び連携協力関係の一層の醸成が図られました。
 これらの諸会合における成果をもとに、より一層の連携・協力体制の実現を図るため、巡視船艇・航空機と各国海上保安機関の勢力の間で様々な訓練を実施し、国や地域を越えた連携の実現に努めています。平成18年度の海上保安庁観閲式及び総合訓練では、平成17年に海上保安庁をモデルに設立したマレーシア海上法令執行庁の長官を招へいしたほか、米国沿岸警備隊の巡視船がこれに参加しています。

フィリピン麻薬取締庁長官との意見交換
▲フィリピン麻薬取締庁長官との意見交換
米国沿岸警備隊の巡視船
▲米国沿岸警備隊の巡視船
 

二国間連携

 二国間で共有する海上犯罪などの諸問題の解決に向け協力して対処するため、海上保安庁では、ロシア、中国、韓国、インドといった諸国と二国間の連携・協力関係を構築し、着実にその成果を上げています。

(1)日印海上保安機関長官級会合

日印海上保安機関長官級会合
▲日印海上保安機関長官級会合
 インドの周辺海域は日本と中東地域を結ぶ海上交通の要衝であり、我が国へ向かう原油タンカーにとって重要な航路です。
 平成11年に発生したアロンドラ・レインボー号事件を契機に海上保安庁とインド沿岸警備隊との関係構築が進み、これまでも長官級会合や連携訓練などの実施により交流を深めてきました。
 平成18年11月に開催された日印海上保安機関長官級会合では「協力に関する覚書」が交され、海賊、海上犯罪、海上セキュリティ、捜索救助、海洋汚染等対策に関する協力をはじめとする両国海上保安機関の協力促進の枠組みが策定されました。
 この取組みについては、平成18年12月に開催された安倍内閣総理大臣とインドのマンモハン・シン首相との日印首脳会談において採択された共同声明の中で、同取組みを歓迎する旨が盛り込まれています。

(2)日露合同油防除訓練(第1回NOWPAP油防除訓練)

 日露合同油防除訓練は、第10回NOWPAP政府間会合(平成17年11月開催)において、NOWPAPの初めての訓練として位置付けられたものです。サハリンプロジェクトの進展に伴いオホーツク海等において大規模な油流出事故の発生が懸念されることから、油防除への対応能力の向上及び国際協力の推進を図るために平成18年5月11日に第1回訓練が実施されました。なお、この訓練中、ロシア側のヘリコプターが不時着する事故が発生し、海上保安庁もこれの救助活動を行い、救難分野における協力関係の重要性を双方が再認識しました。