「海」は人類共有の財産です。この「海」の恵みを有効に活用するため、海の「境界」に関して国際的なルールが定められています。その一つに国連海洋法条約があります。国連海洋法条約は、「海の憲法」とも呼ばれ、海洋の基本的な領域の範囲とその法的地位を定め、海洋における各国の権利と義務を定めています。基本的な領域には、領海(領土と同じように主権が及ぶ。最大で基線から12海里。)、排他的経済水域(EEZ)、天然資源にかかる主権的権利及び海洋の科学的調査などの管轄権を有する。最大で基線から200海里。)、大陸棚(海底及び海底下の天然資源の主権的権利を有する。最大で基線から350海里等、詳しい条件は「特集 - 2. 海洋調査に迫る - 2 海洋調査と海洋権益 -(2)大陸棚の限界画定のための調査」を参照下さい。)などがあります。四面を海に囲まれた我が国においては、これらの限界線こそが、相対国との国家権益の接線ともいうべき「境界線」なのです。
国連海洋法条約では、領海を、同条約の規定により決定される基線から12海里以内とするよう定めています。その基線とは、「国が公認する海図に記載されている海岸の低潮線」などとされています。この「国が公認する海図」の刊行を担当しているのが海上保安庁です。海図に記載されている基線は、EEZ及び大陸棚の境界を決定するときにも用いられます。このように、海図は、国際法上、海の領域に関する国の意志を示すものであると言えます。
■海図に示されている領海の基線及び領海の限界線