海上保安レポート 2007

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


特集 海洋国家「日本」と海上保安庁
〜海洋権益保全への取組み〜

はじめに

1.これが現場第一線

2.海洋調査に迫る


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


海上保安官を目指す


語句説明・索引


図表索引


資料編


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コラム6 密漁は許さない

第二管区海上保安本部 八戸海上保安部
巡視船「あぶくま」 機関長 浜道 功
  青森県下北半島の太平洋沿岸はあわびの好漁場として知られ、これまで密漁者の標的とされてきた。平成18年10月に検挙した潜水器によるあわび密漁事件は、まさにこの好漁場で発生し、全国的に見ても例のない事件であった。
捜査員による証拠物の確認作業
▲捜査員による証拠物の確認作業
 事件の端緒は、平成18年8月青森県南地方で、密漁防止を訴える密漁監視団を含むあわび密漁者6名を逮捕したことだった。この事件は社会的反響が高く、連日のように新聞・テレビ等に取上げられた。これにより「県北地方には、もっと悪い密漁者がいる」との多くの情報が寄せられた。
 これらの情報を受け、巡視船「あぶくま」では聞き込みなどによる情報収集を実施していたところ、潜水業者が漁協とウニの採捕に関する契約を結び、ウニ採りの許可を得た上で、隠れてあわびを採っているという情報を入手した。
 巡視船「あぶくま」では直ちに専従班を編成し、継続的な内偵捜査を開始。潜水業者が乗り組む船には、漁業協同組合の監視員があわび密漁防止のため同乗していることから密漁などできるはずがないと、当初は情報の確度を疑っていた。
 内偵捜査を実施している専従班は、潜水業者のしたたかな犯罪行為を目の辺りにした。まさに、潜水業者はウニとは別に、監視員の死角となる船尾側からあわびを船上に揚げ船内に隠しているのである。監視員は全く気づく様子もない。帰港後、監視員が去った後で、潜水業者があわびの入ったバックを車に積み込むのを現認し、犯行形態を特定するに至った。 
押収したあわび
▲押収したあわび
  内偵結果を船内会議で報告し、10月12日に現行犯逮捕する方針を固め、引き続き内偵捜査を実施した。ついに、10月12日午後2時過ぎ、同船が着岸したのを見計らい陸上から捜査員が突入。車は一旦逃走を図ったものの捜査車両が阻止、車内を確認したところ、バックの中にあわび427個(43.5kg)が隠蔽されていたことから、乗組員2名を青森県海面漁業調整規則違反で現行犯逮捕した。
その後の捜査において、押収した証拠物等や県外を含めた買受人・食堂従業員・監視員・漁協関係者・金融機関など約150名の事情聴取を行うなど裏づけ捜査を行い、被疑者を追及したところ、平成17年1月から密漁あわび(4.7トン)を蓄養あわびと偽り、総金額約2,800万円の利益を得た旨自供するにいたった。
 本件は「密漁は絶対に許さない」を目標に粘り強い内偵捜査が実を結んだものであり、八戸海上保安部では、引き続き取締りを強化している。