海上保安レポート 2007

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


特集 海洋国家「日本」と海上保安庁
〜海洋権益保全への取組み〜

はじめに

1.これが現場第一線

2.海洋調査に迫る


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


海上保安官を目指す


語句説明・索引


図表索引


資料編


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コラム7 「万景峰92」号入港への対応にあたって

第九管区海上保安本部 新潟海上保安部
国際取締官A
 平成18年4月に北朝鮮籍貨客船「万景峰92」号が北朝鮮から新潟港へ入港したときの話である。
入港する「万景峰92」号
▲入港する「万景峰92」号
 4月25日午前7時頃、朝もやの中、警戒にあたる巡視船艇・航空機のはるか遠くに万景峰92号の船影が見え始めた。万景峰92号が巡視船艇の厳正な警戒のもと新潟港に入港する。出迎えの関係者や拉致事件に抗議する多くの市民、報道関係者が集まり、警察官が警備にあたっている。海上保安庁の立入検査班は、税関、入国管理局など関係機関とともに、まず最初に万景峰92号に乗り込む。
  海上保安庁の立入検査は、関係機関と合同で、密航・密輸等の犯罪を防ぐとともに、船内及び法定書類等の検査を行う目的で実施する。私の任務は、その一連の手続きの通訳を行うことである。
  万景峰92号乗組員の口調が早いうえ、北朝鮮独特のイントネーションもあり、なかなか聞き取れないこともある。検査自体が長引いてくると、「何をやっているんだ。早くしてくれ。疲れているんだ。」と乗組員側の不満の矛先はすべて通訳官に向けられ、険悪な状況になっていく。しかしながら、このような状況でも乗組員に乗せられることなく冷静沈着に対処することが鉄則であり、検査についても妥協することは許されない。
  この間、立入検査班は乗組員立会いのもと、船内などの必要な検査を確実に実施しており、慌ただしく各区画から立入検査班長に検査終了の報告があがってくる。
「万景峰92」号へ乗船する立入検査班
▲「万景峰92」号へ乗船する立入検査班
  立入検査班長からは、説得を繰り返し検査に協力させるようにと指示があり、私も、いらついている乗組員に対し、「短時間で済ませるためにも立入検査に全面的に協力して欲しい。」と何度も説得を続けた。
  しばらくすると、関係機関の責任者により検査終了が確認され、万景峰92号船長に、検査が終了し法令違反などがなかった旨を伝え、立入検査を終了した。
  立入検査班における通訳官の任務として、班長の指示により通訳を行うが、私が話した言葉がそのまま日本国海上保安庁の言葉となることから相手に誤解を招かないように十分な配慮をする必要があるため、今後も的確な通訳ができるように腕を磨くことが私の目標である。
(現在、日本政府としては、すべての北朝鮮籍船の入港禁止措置など(平成18年10月13日発表)を講じているところである。)