海上保安レポート 2007

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


特集 海洋国家「日本」と海上保安庁
〜海洋権益保全への取組み〜

はじめに

1.これが現場第一線

2.海洋調査に迫る


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

1. 海難救助
2. マリンレジャーの安全推進
コラム 8
機動救難士出動!孤立ダイバー7名を救助!

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


海上保安官を目指す


語句説明・索引


図表索引


資料編


本編 > 生命を救う > コラム8 機動救難士出動!孤立ダイバー7名を救助!
コラム8 機動救難士出動!孤立ダイバー7名を救助!

第八管区海上保安本部 美保航空基地
機動救難士 田中 秀人
 平成18年7月2日午後7時頃、「敦賀市の立石岬付近の海岸でボートが乗り掲げ、7名が孤立状態になっている」との情報が第八管区海上保安本部運用司令センターから入った。美保航空基地当直から緊急呼出しの電話が鳴り響き、「海難発生。機動救難士、出動準備」の連絡が入る。急いで基地へ向かい、バディとともに、情報収集を行いながら救助に必要なボンベ、マスクや吊り上げ用機材など機材準備にかかる。午後7時45分、乗り込んだヘリコプターは美保航空基地を離陸した。
 午後10時23分現場上空へ到着。現場上空は気流が悪く、ヘリコプターが揺れる。周辺は月明かりもない暗闇で、多数の木が張り出した断崖絶壁に囲まれており、ヘリコプターによる吊り上げ救助は困難であると直感した。揺れる機体の中、林の中に孤立者が焚いている火がかすかに見え、孤立者確認と機長に報告する。しかしながら、間髪いれずに「この場所での吊り上げ救助は厳しいぞ」と機長が叫んだ。
 現場に急行した巡視船「えちぜん」から「磯波が高く現場への接近、救助は困難である」との無線が入る。なんとか孤立者の元へ辿り着きたい・・。バディと目が合い「「えちぜん」へ降下し、「えちぜん」の搭載艇で孤立現場に近づけるところまで行き、そこからは泳いで行く」と決断し機長に進言した。機長からの「了解」とともにヘリコプターから「えちぜん」への降下開始。
孤立者の搬送
▲孤立者の搬送
救助者の引きあげ
▲救助者の引きあげ
  「えちぜん」乗組員に救助計画を説明し、孤立者は寒さと空腹を訴えていることから食料・飲料水・ヤカンを準備し、リュックに詰め込む。「準備よし」の気合いの入った声とともに「えちぜん」の搭載艇へ乗り込む。暗闇と高いうねりのため、陸岸に接近しすぎると搭載艇も危険な中、ぎりぎりの暗礁等がある海域まで接近。操船者が「これ以上は近づけない」と叫ぶ。焚き火の見える孤立現場まで距離約400m。バディと最終確認。行けると判断。「海面よし!」と言うと同時に飛び込み、必死に泳いでいく。浅瀬に近づくにつれ磯波が激しくぶつかり合い、2回ほど磯波に飲み込まれ、海底や岩肌にぶつかる。一瞬にしてボロボロに破れたリュックを背負って、磯場を這い上がり、孤立者の元へやっとの思いで到着した。
 「海上保安庁です。大丈夫ですか?怪我人は居ませんか?」「1人が捻挫していますが、あとは大丈夫です」震えた孤立者の声から疲労困憊した様子が伺えた。すぐに焚き火にヤカンを置き、お湯を沸かし、カップラーメンを配る。孤立者の安ど感が見受けられ、孤立者から「助かった。来てもらえて良かった。」と声を掛けてもらう。夜明けとともに救助活動を再開することを説明し、焚き火の周りで仮眠をとってもらった。
 早朝、特殊救難隊員、機動救難士、「えちぜん」潜水士により、午前6時22分までに7名全員の救助を完了した。その日、出動報告書などをまとめ、家に帰り着いたのは午後7時であった。無事に7名の尊い命を救えたことは喜びであり、今後も安全第一に人命救助に携わっていきたい。