午後10時23分現場上空へ到着。現場上空は気流が悪く、ヘリコプターが揺れる。周辺は月明かりもない暗闇で、多数の木が張り出した断崖絶壁に囲まれており、ヘリコプターによる吊り上げ救助は困難であると直感した。揺れる機体の中、林の中に孤立者が焚いている火がかすかに見え、孤立者確認と機長に報告する。しかしながら、間髪いれずに「この場所での吊り上げ救助は厳しいぞ」と機長が叫んだ。
現場に急行した巡視船「えちぜん」から「磯波が高く現場への接近、救助は困難である」との無線が入る。なんとか孤立者の元へ辿り着きたい・・。バディと目が合い「「えちぜん」へ降下し、「えちぜん」の搭載艇で孤立現場に近づけるところまで行き、そこからは泳いで行く」と決断し機長に進言した。機長からの「了解」とともにヘリコプターから「えちぜん」への降下開始。
▲孤立者の搬送 |
▲救助者の引きあげ |
「海上保安庁です。大丈夫ですか?怪我人は居ませんか?」「1人が捻挫していますが、あとは大丈夫です」震えた孤立者の声から疲労困憊した様子が伺えた。すぐに焚き火にヤカンを置き、お湯を沸かし、カップラーメンを配る。孤立者の安ど感が見受けられ、孤立者から「助かった。来てもらえて良かった。」と声を掛けてもらう。夜明けとともに救助活動を再開することを説明し、焚き火の周りで仮眠をとってもらった。
早朝、特殊救難隊員、機動救難士、「えちぜん」潜水士により、午前6時22分までに7名全員の救助を完了した。その日、出動報告書などをまとめ、家に帰り着いたのは午後7時であった。無事に7名の尊い命を救えたことは喜びであり、今後も安全第一に人命救助に携わっていきたい。