海上保安レポート2003
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2 船舶交通を支える海上保安庁


4 新たな時代への対応

 皆さんの目に触れることは少ないかも知れませんが、海上保安庁では、これまで紹介したように、時代背景や社会的ニーズに合わせた数々の船舶交通の安全確保のための施策を展開してきました。

 これは、自ら船を操り、海で働く海上保安官が「海の安全を守る」という視点で必要と思われる業務に真剣に取り組んできた結果です。

 ここからは、今後海上保安庁がどのようなスタンスで船舶交通の安全確保に取り組んでいくのかを紹介します。

1 船舶交通に求められる新たなニーズ

 これまで船舶交通は、国民生活を支える生活基盤として、また産業活動を支える重要な物流基盤として、さらに地域作りの核として、我が国の発展に大きく貢献してきました。今後とも、船舶交通の安全確保は、我が国の発展のために重要な使命であることは論を待たないところです。

 さらに、21世紀を迎えた今日、企業も人も国境を越えて活動し、情報が瞬時に世界を駆け巡る社会の中で、船舶交通もこれに対応した変化を見せています。船舶の大型化、専用化はますます進展し、テクノスーパーライナーなどの超高速船が出現しています。また、船舶のみならずこれを受け入れる港湾においても、航路やふ頭の整備が着々と進められています。加えて、SOLAS条約*1の改正により、AIS(船舶自動識別装置)などの新たな航行支援装置も登場し、運航者が他船の情報を容易に把握できる環境も整ってきています。

 また、このような船舶の航行環境の変化に加えて、沿岸域における漁業活動や、マリンレジャー活動の多様化により、海上の利用形態はますます複雑化しています。

 さらに、モーダルシフトによる地球規模の環境問題への対応や、海運における国際競争力の強化などの船舶交通政策に求められる課題は、近年多岐に及んでいます。

2 新たな船舶交通安全政策の展開

 海上保安庁では、これまで海難が社会経済に与える損失の重大性に着目し、事故を起こさないことを最重要課題として航行安全施策を展開するとともに、航路標識については、航行の安全性を重視しつつ、公共性にも配慮して国土の均衡ある発展に向けた整備を行ってきました。

 今後とも、船舶交通の安全確保に積極的に取り組むことは勿論ですが、昨今の船舶交通に求められるニーズを踏まえると、その安全を確保するに当たって、AIS(トピックス「AISの実証試験」を参照して下さい。)などITを活用して安全性の更なる向上を図るとともに、効率性や環境にもこれまで以上に配慮していくことが求められていると考えられます。

 このため海上保安庁では、従来灯台部で行っていた航路標識の整備・運用などの航行援助業務と警備救難部航行安全課で行っていた航行規制や安全指導などの航行安全業務を一元的に実施し、安全性と効率性が両立した船舶交通環境を創出するという政策方針のもと、平成15年4月1日から新たな組織として「交通部」を設置し、種々の施策を展開することとしました。

【新たな船舶交通安全政策の展開】
新たな船舶交通安全政策の展開

 現時点で推進している船舶交通安全施策は次のとおりです。

海上ハイウェイネットワークの構築

 海上保安庁では、湾内航行のボトルネックを解消する国際幹線航路の整備、海上交通センター、灯台などへのAIS陸上局の設置、新しい情報技術を導入した次世代型航行支援システムの整備、航路標識を見やすくする高機能化等地域に密着した安全情報提供システムの整備などのハード施策と、新しい交通体系を構築するための調査研究等のソフト施策とを有機的に組み合わせることにより、入湾から着岸までの湾内ノンストップ航行を実現し、船舶の安全航行の確保と航行時間短縮による物流の効率化を実現すべく、海上ハイウェイネットワーク構想の推進に取り組んでいるところです。

【海上ハイウェイネットワーク構想】
海上ハイウェイネットワーク構想

*1 SOLAS条約(International Convention for the Safety of Life at Sea,1974) 1974年の海上における人命の安全のための国際条約 タイタニック号沈没事故を契機に、それまで各国がそれぞれの国内法によって規定していた船舶の安全性確保について国際的に取り決めた条約。船舶が備えるべき設備や構造について規定されている。
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