1 国境を守る海上保安庁
5 外国海洋調査船への対応
我が国周辺海域では、海洋開発に対する各国の関心の高まりや海底資源開発技術の進歩などを背景として、外国による海洋調査活動が多く確認されています。
我が国は、国連海洋法条約等に基づき、我が国の同意がない限り、排他的経済水域及び大陸棚において、外国が海洋の科学的調査を行うことを認めないこととしています。このため海上保安庁では、外国海洋調査船等に対し巡視船艇・航空機により監視を行い、我が国の同意がないものに対しては、外務省等関係機関に速報するとともに、現場海域において中止要求を行うなどの対応をしています。
しかし、中国はこれまで、我が国との間で排他的経済水域及び大陸棚の境界線が確定していないことなどを理由に、東シナ海における我が国の排他的経済水域において、我が国の同意なく調査活動等を行っていました。特に、平成11年には過去最高の33隻の海洋調査船を確認しました。中には我が国の領海内に侵入して調査活動を行った事案もありました。また、平成12年においても24隻を確認するなど、中国海洋調査船の活動の活発化が大きな問題となりました。
このため、東シナ海における相手国の近海で海洋の科学的調査を行う場合は相互に事前通報を行うことを内容とする海洋調査活動の相互事前通報の枠組みが平成13年2月に日中間で合意され、運用が開始されました。
平成14年には、海上保安庁では、我が国の排他的経済水域内において海洋の科学的調査活動を行っている外国海洋調査船15隻(うち中国12隻)を確認しています。このうち4隻の中国海洋調査船は事前通報等がない、又は事前通報の内容と異なる調査活動を行っていたことから、巡視船艇・航空機により追尾監視・中止要求を行うとともに、外交ルートを通じ中止要求等を行いました。
外国海洋調査船
外国海洋調査船の確認状況の推移
中国海洋調査船の確認状況の推移
海の境界線
広い海には目には見えない線があります。国連海洋法条約では次のとおり「海の境界線」が定められています。
○ 領海基線(baseline)
領海の幅を測定するための基線。通常は、海岸の低潮線が基線となるが、海岸線が著しく曲折しているか又は海岸に沿って至近距離に一連の島がある場合は、直線基線を用いることができる。我が国は直線基線を平成9年1月1日から採用している。
○ 領海(territorial sea)
領海基線から、特定海域を除き12海里(約22km)より内側の海。
日本の主権が及ぶ。
他の国に対しては、無害通航権が認められている。
○ 排他的経済水域(EEZ, exclusive economic zone)
領海の外側で、領海基線から200海里(約370km)より内側の海。
資源・経済について主権的権利が認められている。
他の国に対しては航行、海底電線等の敷設の自由が認められている。
○ 大陸棚(continental shelf)
領海基線から、200海里(約370km)より内側の海底。さらに地形、地質的条件を満足すれば最大350海里(約650km)まで延長できる。
海底及びその下の天然資源の主権的権利が認められている。
※大陸棚調査について
海上保安庁では、昭和58年から大陸棚調査を実施しており、この調査のために測量船が航走した距離は、すでに約72万km(地球18周分)に達している。
これまでの調査により、我が国の国土面積の約1.7倍の海域について、大陸棚の限界を延長できる可能性があることが判明している。
【大陸棚の限界が拡張する可能性のある海域】
【領海、排他的経済水域、大陸棚】
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