安心できる暮らしと環境を守るために
海洋環境保全対策
3 海洋汚染の現状
(1)確認された海洋汚染
平成14年、海上保安庁では海上における油、廃棄物の漂流や赤潮、青潮などの海洋汚染発生を516件確認しました。
平成14年は、過去最低の確認件数となった平成13年に次いで2番目に少ない件数となりました。
なお、油の不法排出、廃船・廃棄物の不法投棄、臨海工場からの汚水の不法排出などの海上環境関係法令違反で、364件を送致しました。
海洋汚染の発生確認件数の推移
●油:乗揚げ等の船舶海難に伴う油の流出、船舶航行中の故意による油の排出等を指す。
●油以外:工場からの排出基準を超えた排水の排出、船舶からの有害液体物質の排出、不法投棄された廃棄物による汚染などを指す。
(2)主な海洋汚染の現状
(1) 漂流・漂着ゴミ
石油化学製品の普及に伴い、漂流・漂着ゴミに占めるその割合が増加しています。通常、石油化学製品は自然には分解せず、半永久的に地球上に残ってしまいます。このため「ウミガメがビニール袋をクラゲと間違えて食べ、内臓に詰まらせて死んでしまう」などの海洋生態系への影響が報告されており、事態は深刻化しています。
下の円グラフは平成14年6月の環境月間にあわせ、全国65カ所で行った全国海岸漂着ゴミ分類調査の結果です。石油化学製品が約7割を占めており、特に目立ったのはタバコのフィルターです。また、これら漂着ゴミのうちのほとんどが日常生活から発生する身近なものでした。
海岸に漂着したゴミ
海岸分類漂着ゴミ調査結果
(2) 船舶からの油の排出
船舶からの油の不法排出については、海上保安庁の監視取締りが厳しくなるに従い、その目を逃れるための手口がますます巧妙となる傾向が見られます。
例えば、油の不法排出を隠ぺいするために、沖合で夜陰に紛れて排出したり、不法排出用のパイプを外観上はわからないように増設していたものなどが挙げられます。これらの原因としては、廃油やビルジの処理費用逃れなどが考えられます。
なお、平成14年の船舶からの油の不法排出での送致件数は135件で、前年の148件と比較して13件減少しました。
油を不法排出しながら航行する船舶
(3) 臨海工場からの汚水排出
平成14年度は、臨海工場からの汚水の不法排出について、例えば、過小に日間排出量を届け出て、規制を逃れようとしたものや、密かに設置した排出管から直接汚水を海域に垂れ流していたもの、工場で使用する原材料中には有害物質を含んでいるにも関わらず、その管理がずさんなことから有害物質を大量に含む汚水を垂れ流していたものなどがありました。また、排出時には摘発から逃れるために従業員により見張りを立てる等、ますます悪質巧妙化しています。これらの原因としては、排出処理施設を設置し、環境保全対策を重視すべきところ、必要な設備投資を行わず、不当な生産性重視の経営をしていることなどが考えられます。
なお、平成14年は15件を送致し、前年の6件と比較して9件増加しました。
更に、平成12年1月に施行された「ダイオキシン類対策特別措置法」により、排出基準を上回るダイオキシン類の排出が禁止されたことに対応し、ダイオキシン類の不法排出の監視取締りも行っていますが、平成14年の違反はありませんでした。
工場排水を採取する海上保安官
(4) 廃船の不法投棄
地方自治体などでは、プレジャーボートの係留施設を新設したり、また、関係機関によるFRP船の処理対策を推進する等して、廃船の不法投棄防止に努めているところですが、依然として廃船の不法投棄は跡を絶たず、投棄した船舶の船名、船舶検査済票の番号等、所有者を特定する手掛かりを故意に削り取るなど悪質なものが多く見受けられます。
平成14年においては、不法に投棄された廃船1,318隻を発見し、このうち、687隻については、海上保安庁の指導又は取締りのもと、所有者等により撤去されています。
なお、撤去されたもののうち、63隻の廃船については、その所有者が廃船指導票の貼付による撤去指導に応じなかったため、これを事件として送致し、その後所有者等により撤去されたものです。
また、平成14年に発見した廃船のうち、909隻(約69%)はFRP船でした。このうち、422隻は既に撤去されています。
廃船の不法投棄
(5) 放置外国船舶
乗揚げ、沈没等により動けなくなり、船舶所有者が撤去義務を履行せず、そのまま放置されている外国船舶は、平成15年3月末現在日本全国で12隻あります。平成14年12月5日、茨城県日立港に乗り揚げた北朝鮮籍貨物船「CHIL
SONG(チルソン)号」の船舶所有者に対しては、外交ルートを通じた船体撤去指導等を行っていますが、平成15年3月末現在撤去されていません。これらの放置外国船舶については、油の抜取りは終了しており、油の流出の恐れはありませんが、漁場の占拠などの被害が生じている事例もあります。
(6) 廃棄物の不法投棄
平成14年度は、廃棄物の不法投棄について、例えば、ダンプカーで大量の汚泥を港内に不法投棄したもの、養殖業者が養殖いかだを不法投棄したもの、漁業者が水産物を加工した後の残さを不法投棄したもの、養豚場から豚の糞尿を不法投棄したものなどがありました。これらの主な原因としては、陸上処分施設のひっ迫により海上への廃棄物不法投棄の蓋然性が高まっていること、暴力団が資金源とするため廃棄物の不法投棄に関わっていること、適正に処理するための費用負担を逃れようとしていることなどが考えられます。
なお、平成14年は、廃棄物の不法投棄で74件を送致しています。
投棄された養殖筏
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