海上保安レポート2003
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本編

海の安全を確保するために


航海の安全のための情報提供

2 平成14年の状況

(1)海図の刊行

 水路測量*1や海象観測*2を実施して得られた情報によって、紙海図、航海用電子海図のような航海用海図や海流図、潮流図等の特殊図などを刊行しています。(資料編参照)

 水深や港湾、航路の状況などの地理的な情報を盛り込んだ航海用海図については、港湾や航路の改修などによる地形の変化に対応することが特に重要ですので、補正図等により最新の状態を維持することに力をいれています。

 航海用海図の最新の情報を維持するために、平成14年度には、石巻湾付近を含めた9海域の沿岸測量や函館港を含めた3海域の港湾測量などを実施し、航海用海図100版を新改版したほか、53図の補正図を刊行しました。

 航海の参考用として、海流の状況を月別に表した海流図、狭水道や内湾における潮流の状況を表した潮流図等の特殊図についても、最新の状態に維持しています。(資料編参照)

 また、従来の紙海図と同程度の情報だけでなく、画面上に自船等の位置や、速力、針路などの航海の安全に必要な情報を表示できる電子海図表示システム(ECDIS*3)に必要な航海用電子海図(ENC*4)を最新の状態に維持するため、電子水路通報(ER*5)を12回(毎月1回)発行しました。

海図作成風景
海図作成風景

ECDIS
ECDIS
・自船位置の自動表示
・危険な海域への接近に対する警報機能
・航跡の自動記録
・レーダ映像との重ね合わせ表示
等の機能があります。

(2)水路書誌の刊行

 平成14年度は、水路書誌*611版を新改版しました。そのうち外国人の運航する船舶の海難防止対策の一環として、昨年に引き続き、英語版水路誌(本州北西岸)を刊行しています。

【水路通報・航行警報の概念図】
水路通報・航行警報の概念図

(3)水路通報・航行警報

 水路図誌を最新のものに維持するための情報、船舶交通の安全に必要な情報などを掲載した水路通報や管区水路通報を毎週一回発行するとともに、インターネットでも提供しました。平成14年には約2万7千件の情報を水路通報及び管区水路通報として提供しました。

 また、航行の安全のために緊急に周知を必要とするものについては、衛星通信、インターネット等によりNAVAREA XI航行警報*7、NAVTEX航行警報*8、日本航行警報*9、管区航行警報*10などとして航行船舶に対して通報しました。これらの航行警報は、携帯電話、FAX、ラジオ、漁業無線局などを通じても提供しています。平成14年には、約1万件の情報を航行警報として提供しました。

 さらに、我が国周辺海域の海流・海氷等の海況を取りまとめた海洋速報や黒潮等の海流の状況を短期的に予測した海流推測図などを海流通報として提供しています。

インターネットによる水路通報
インターネットによる水路通報

*1 水路測量 水深、海底地形、海底地質、地磁気、重力などを測ること。

*2 海象観測 潮位、海潮流(海水の流れ)、波浪、水温、塩分濃度などを測ること。

*3 ECDIS(Electronic Chart Display and Information System)

*4 ENC(Electronic Navigational Chart)

*5 ER(Electronic Navigational Chart Revision)

*6 水路書誌は海図に表現できない港湾・航路・気象・海象の概要、航路標識の状況、潮汐・潮流の予報、惑星・恒星等の位置等の文字情報について、分野別に刊行している。

*7 NAVAREA XI航行警報 大洋を航海する船舶の安全のために緊急に通報する必要のある情報をインマルサット静止衛星を利用した高機能グループ呼び出しによる放送で自動印字式(英語)により提供される。全世界を16の区域に分け各区域の責任を担う区域調整国が、区域内の情報を収集して必要な情報を提供している。このうち、我が国は11区域(XI)の区域調整国となっている。

*8 NAVTEX航行警報 世界的に統一された航行警報で、各国が沿岸地域〈距離約300海里内(約600km)〉において、航行の安全のための緊急を要する情報を自動印字方式により航行船舶へ提供しているもの。

*9 日本航行警報 太平洋、インド洋及び周辺海域を航行する日本船拍の安全のため緊急に通報する必要のある情報を、インターネットなどにより提供している。

*10 管区航行警報 管区海上保安本部担任水域内で発生した事案のうち、航行船舶に対し交通の安全のため緊急に通報する必要のある情報を、無線電話により提供している。
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