海の安全を確保するために
海難救助
3 今後の取組み
海上保安庁では、海難等による遭難者を一人でも多く救助するために、海難等の発生から救助に至る3つの過程(Stage)において、次に述べる活動を行っており、一層迅速かつ的確に業務を実施することにより、目標が達成できるよう取り組んでいます。
救助までのフロー図
(1) 1st Stage(海難情報の把握)
海難等が発生した場合、遭難者を迅速に救助するために最も重要なことは、発生した事故について、いかに早く情報を入手することができるかということです。事故の認知が早ければ救助までの時間が短縮され、救助率の向上につながるからです。
そこで海上保安庁では、情報を素早く入手するために、GMDSS*1に対応した遭難警報を24時間体制で聴守するとともに、緊急通報用電話番号「118番」を導入しています。
118番は海難発生情報を海上保安庁に通報する最も迅速で手軽な方法です。今後さらに多くの方々に118番を理解し有効活用してもらうために、継続して周知キャンペーンを推進することとしています。
(2) 2nd Stage(海難現場への急行)
海難等の発生を認知した後に、次に重要なことは、現場に救助勢力をどれだけ早く投入できるかということです。
海上保安庁は、海難等の発生に備え、24時間の当直を行うなど即応体制に万全を期しています。また、海難等の発生海域付近を航行している一般船舶に救助要請をする船位通報制度(JASREP*2)の運用のほか、民間救助組織の効率的な活用等によるレスキューネットワークの構築にも努めています。
また、海潮流等によりその位置が刻々と変化する海上の漂流者に対して、救助勢力を最短時間で到着させるために、高精度な漂流予測システムを活用するとともに、遭難船舶を遠距離からでも探知することができる高性能レーダーや夜間でも遭難者の体温を感知して発見することができる赤外線捜索監視システム等の導入を行っています。
さらに、海中に転落した遭難者が生還するためには、浮いて救助を待つことができるライフジャケットの着用が非常に有効であるため、ライフジャケットの着用率を50%以上に向上させるべく、キャンペーンの実施や関係団体の指導等により、その着用を強力に推進していくとともに、ライフジャケット着用状況の調査を継続して行っていくこととしています。
【レスキューネットワーク図】
●ライフジャケット着用状況
(注)平成14年ゴールデンウィーク期間及び夏期に海上保安庁のヘリコプターにより全国で目視調査。「遊漁船」については、「モーターボート(船室あり)」又は「モーターボート(船室なし)」のいずれかに集計。「その他」とは、ゴムボート、シーカヤック等をいう。
(3) 3rd Stage(救助能力の向上)
救助勢力が現場に到着した後は、遭難者を迅速に、しかも安全に救助するための救助能力が必要です。
海上保安庁では、困難な条件下においても救助する能力を有する特殊救難隊員や潜水士等を養成するとともに、生命に危険のある傷病者に対しては救急救命処置が重要であることから、これを実施することができる救急救命士の養成を継続していきます。
また、海難及び船舶からの海中転落事故の95%が沿岸20海里以内の海域で発生しているため、海上保安庁では沿岸海難等の対応が重要であると考えています。このため、平成14年10月、福岡航空基地に配置した機動救難士*4に加え、平成15年4月、救護士*5を函館、美保、鹿児島航空基地に配置し、沿岸海域での人命救助体制を強化しました。
このほか、遭難者の陸上への迅速な搬送や医師の救急往診が必要な際の、巡視船艇・航空機による輸送体制の更なる充実を目指します。
以上述べてきた3つのStageにおける様々な方策を実施することで、更なる死亡・行方不明者の減少が可能であると確信しています。
救助活動
*1 GMDSS(Global Maritime Distress and Safety System) 海上における遭難及び安全に関する世界的な制度
衛星通信や最先端のデジタル通信技術を利用することによって、船舶が世界中どこを航行していても遭難・安全通信をより迅速・確実に行うことができる通信システムであり、突然の海難に遭遇した場合でも自動的に又は簡単な操作でいつでもどこからでも遭難警報の伝達が可能です。平成11年から全面的に運用開始されています。
*2 JASREP(Japanese Ship Reporting System) 北緯17度の線以北かつ東経165度の線以西の海域内の船舶から、船舶の位置や針路・速力などの
通報を受けて、その動静を把握することにより、当該海域における海難救助の効率化を図ることを目的とした制度。
*3 BAN(Boat Assistance Network) プレジャーボート等を対象とした会員制救助サービス。
*4 海上で発生した傷病者等の救助に迅速かつ適切に対処するため、機動力、捜索能力、吊り上げ救助能力を有するヘリコプターに同乗し、吊り上げ救助、潜水作業及び救急救命処置を行います。
*5 海上で発生した傷病者等の救助に迅速かつ適切に対処するため、機動力、捜索能力、吊り上げ救助能力を有するヘリコプターに同乗し、船舶等からの吊り上げ救助及び救急救命処置を行います。
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