海上保安レポート2003
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治安を維持するために


海賊対策

2 海賊問題の課題と取組み

 国土交通省の調査によると、平成14年の日本関係船舶*1の被害件数は、前年の10件から16件と増加しました。

 近年の海賊の特徴は、悪質なハイジャック事件の増加です。その中には、人質目的で乗組員や船舶を強奪し、身代金を要求する事件も発生していることから、更なる海賊対策の強化が求められています。

 海賊によって、消息不明になった船舶や積荷が、後日第三国で発見されたり、ハイジャックされ発見された船舶が船名、時には船籍までも変えられている状況から考えると、海賊事件には、強奪した船の売却、船籍の変更、積荷の売却などを行う国際的なシンジケートが関与していると考えられます。また、犯行後の逃走範囲も広域化しており、一国の対応のみでは、犯行グループを摘発することは困難です。

 このため、各国の海上警察力の向上や連携を図ることにより、海賊を追いつめていく必要があります。

 海上保安庁では、海賊及び船舶に対する武装強盗事件への取組みについての指針となる「アジア海賊対策チャレンジ2000*2」に基づき、各国との相互協力及び連携強化を進めています。

海賊・テロ対策連携訓練
海賊・テロ対策連携訓練

海賊・テロ対策連携訓練

 具体的には、これまでにインド、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、タイ、ブルネイ、ベトナムに巡視船・航空機を派遣し、公海上のしょう戒活動、寄港国の海上警備機関との連携訓練や職員相互の意見交換を行い、国際連携の強化を図っているほか、海上保安大学校への留学生の受け入れや海上犯罪取締り研修の開催など、アジア各国の海上警備機関の人材育成を図り、地域全体の海上警察力の向上を図るために積極的に協力しています。

 海上保安大学校への留学生の受け入れは平成13年4月にスタートし、本年3月、3人の留学生が2年間の留学生活を終え卒業しています。なお、この4月に新たに4人の留学生が入学しています。

 また、海上犯罪取締り研修については、国際協力事業団(JICA*3)九州国際センターの協力を得て、平成13年、14年に、それぞれ約1カ月間、研修を実施しました。

 なお、現在の厳しいテロ情勢を踏まえ、巡視船・航空機の派遣の際には、

 (1) 寄港国関係機関との海賊・テロに関する情報交換

 (2) 海賊・テロによるハイジャックを想定した日本船舶等との連携訓練

を実施するとともに、事案発生に備えた特殊部隊の即応体制をとるなど、海賊対策だけではなくテロにも備えたしょう戒を実施しています。

 このほか、海賊問題についての解決策を検討するため、海上警備機関の間で定期的に開催されている海賊対策専門家会合の開催を支援しています。海上保安庁では、これまでに、マレーシア、インドネシア、フィリピンで開催された海賊対策専門家会合の企画立案を行うなど議題設定の段階から深く関与するとともに、会議開催経費の負担等を実施しました。

*1 日本関係船舶 日本籍及び日本の船会社が運航する外国籍船

*2 「アジア海賊対策チャレンジ2000」は、平成12年4月、アジア地域の15の国と地域から、26の海上警備機関が参加して、東京で開催された「海賊対策国際会議」において、海賊事件に対する今後の取組みについての指針として採択されたもの。各国の海上警備機関間の相互協力・連携の推進・強化、 海賊情報の迅速な交換の実施、海賊行為に対する取締りの強化、被害船舶・者に対する支援、専門家会合の継続的な開催などをその内容としている。

*3 JICA Japan International Cooperation Agency
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