海上保安レポート 2008

●はじめに


特集1 海上保安庁 激動の10年

特集2 海洋基本法を見据えた海上保安庁の取組み〜新たな海洋立国の実現に向けて〜

1.体制を充実させて

2.海洋調査により海を拓く

2.大規模海難ゼロに向けて

特集3 海上保安庁のあゆみ


海上保安庁の任務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


目指すは海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

海上保安制度創設60周年記念 特集1 海上保安庁 激動の10年 > 2004年
2004年(平成16年)
海上保安庁の動き
 国際港湾における水際対策・危機管理体制の強化のための港湾危機管理官制度の発足、テロ対策のための国際船舶・港湾保安法の施行に伴う我が国への入港船舶に対する事前審査や立入検査の徹底、東京におけるアジア海上保安機関長官級会合の開催、アジア初のPSI(大量破壊兵器等の「拡散に対する安全保障構想」)海上阻止訓練の実施など、政府全体でテロ対策の強化を進めました。
 大陸棚の限界画定のため、政府全体で海域調査に着手し、海上保安庁は測量船2隻を専従、かつ、民間の調査能力も活用し、調査を本格化させました。
 さらに、自然災害が猛威を振った年で、集中豪雨、度重なる台風襲来、新潟県中越地震等への対応のほか、練習船「海王丸」座礁海難では、乗組員167名全員を救助するなど、海上保安庁がもてる救難防災能力をフルに発揮した年でもありました。また、マスメディアにおいて、映画「海猿」がヒットし、潜水士、海上保安官の人気は一挙に高まりました。
社会の動き
 死傷者約4,900人、10万人以上が避難生活を余儀なくされた新潟県中越地震、日本への台風上陸最多10回等自然災害が猛威をふるい、さらに、79年ぶりに各地で発生した鳥インフルエンザが国民に不安を与えました。一方では、拉致被害者の家族が帰国、アテネオリンピックで金メダル16個獲得等の話題もありました。海外では、死者数約12万人と報じられたスマトラ島沖における大地震が発生しました。また、ロシア南部における学校占拠、旅客機2機の同時爆破等ロシア国内で相次いでテロが発生しました。
2004年(平成16年)の出来事
中国人活動家が魚釣島に不法上陸
 3月24日、尖閣諸島周辺の我が国領海内で、中国人活動家が乗船した中国籍漁船1隻が魚釣島に向け接近しているのを領海警備に当たっていた巡視船が発見、直ちに規制行動を執ったものの、同活動家は小型の手漕ぎボート2隻を使用し、7名の活動家が魚釣島に不法上陸しました。第十一管区海上保安本部(沖縄県)は、直ちに管内の巡視船艇・航空機を出動させ、不法侵入した中国漁船を領海外へ退去させるとともに、警察官が逮捕した活動家7名を巡視船により那覇港まで搬送しました。その後、同活動家7名は沖縄県警察本部から入国管理局に引き渡され、中国に強制送還されました。
活動家船舶への規制
▲活動家船舶への規制
国際船舶・港湾保安法の施行
 米国同時多発テロ事件を受け、船舶及び港湾施設の保安の確保を目的として、平成14年12月12日に採択された改正SOLAS条約を担保するために、「国際船舶・港湾保安法」が第159回国会で成立し、7月1日から施行されました。海上保安庁では同法に基づく入港規制、注意を要する船舶への立入検査・監視を徹底することとしました。
首相官邸での港湾危機管理官の任命
▲首相官邸での港湾危機管理官の任命
港湾危機管理官の設置
 1月16日に、内閣総理大臣から、水際危機管理チーム参事官及び同チーム空港・港湾危機管理官が任命され、「水際危機管理チーム」が発足しました。この港湾危機管理官には、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸の各海上保安(監)部長が任命されたほか、これらの港以外の港湾(118か所)にも、港湾危機管理官と同様の機能を有する港湾危機管理担当官(海上保安官又は警察官)が設置されました。
航海訓練所練習船「海王丸」座礁海難への対応
救助の様子
▲救助の様子
 10月20日、練習船「海王丸」(総トン数約2,500トン)は、台風23号を避けようと伏木富山港沖で錨泊していたところ、折からの強風により走錨し、防波堤付近に座礁しました。海上保安庁では、巡視船艇延べ9隻・航空機延べ8機、特殊救難隊機動救難士及び機動防除隊が出動し、直ちに救助と流出油防除にあたり、乗組員・実習生167名全員を無事救助しました。
座礁し大波を受ける「海王丸」
▲座礁し大波を受ける「海王丸」
海上交通センターの  レーダー画像
▲海上交通センターのレーダー画像
各海上交通センターでAISを活用した次世代型航行支援システムの運用開始
 AIS(船舶自動識別装置)は、船舶の船名、識別符号、種類、位置、針路、速力、航行状態等の情報を船舶相互間又は船舶と陸上局の間で自動的に交換するシステムです。海上保安庁では、船舶交通の安全及び運航能率の向上を図ることを目的として、AISを活用した航行支援システムの整備に着手、7月1日に東京湾海上交通センター(神奈川県)で運用開始し、その他の海上交通センター6か所においても順次運用を開始しました。
海上保安庁が協力!映画「海猿」公開
 平成15年7月12日から約1月半にわたり、海上保安庁潜水士を主人公とする初の映画「海猿」の撮影が海上保安大学校を舞台に行われ、同校学生・職員がキャストとして出演するなど全面的に協力しました。映画「海猿」は6月12日に劇場公開され、さらにテレビドラマ、映画へと続き、観客動員数が500万人を超える日本映画至上空前の大ヒットとなりました。テレビドラマ及び二作目の「LIMIT OF LOVE 海猿」でも、海上保安庁は積極的に撮影協力をしました。
ドラマ「海猿」のワンシーン
▲ドラマ「海猿」のワンシーン