海上保安制度創設60周年記念 特集1 海上保安庁 激動の10年 > 1999年
1999年(平成11年)
海上保安庁の動き
能登半島沖で2隻の不審船が発見され、巡視船艇等で追跡し、停船命令及び威嚇射撃を行いましたが、捕捉できなかった事案が発生しました。この事案により、我が国周辺海域での不審船の存在とこのような事態に対応する海上保安庁の任務について広く国民に認識されるとともに、海上保安庁では巡視船艇の能力強化、武器使用要件の見直しなど抜本的な不審船対策の強化に着手しました。
このほか、新日韓漁業協定の発効による新たな漁業秩序への対応、 「ALONDRA RAINBOW」号ハイジャック事件を契機とした 海賊対策の推進、過去最高押収量となる台湾籍漁船「新生」号による覚せい剤密輸入事件等相次ぐ密輸事犯の摘発がありました。さらに、シップ・オブ・ザ・イヤーに官庁船として初めて測量船「昭洋」が選ばれました。
社会の動き
長引く不況の中、企業でリストラという大きな波がありました。また、国内初の臨界事故である東海村ウラン加工施設臨界事故が発生し、多数の被曝者が発生しました。さらに、羽田発新千歳行き全日空機ハイジャック事件のような大惨事を招くおそれがあった事案もありました。海外では、巨大地震発生によりトルコ、台湾で多数の犠牲者が発生。朝鮮半島では、黄海において北朝鮮魚雷艇と韓国海軍艦艇の銃撃戦がありました。ヨーロッパでは、単一通貨「ユーロ」が導入され欧州連合(EU)が一つにまとまった年でもありました。
能登半島沖不審船
事案への対応 3月23日、能登半島沖の不審な漁船に関する情報を海上自衛隊から入手し、巡視船艇15隻、航空機12機により不審船2隻を追跡。再三の停船命令に従わず、これを無視し逃走し続けたため、威嚇射撃を実施しました。航続距離、速力の問題から巡視船艇による追跡が困難となり、海上自衛隊の海上警備行動が発動されましたが、不審船を捕捉するには至りませんでした。
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▲不審船への威嚇射撃 |
▲漁船「第二大和丸」に偽装した不審船 |
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▲取締りのため韓国漁船に飛び移る海上保安官 |
「新日韓漁業協定」の発効 1月22日、「漁業に関する日本国と大韓民国との間の協定」の発効により、 EZ漁業法等国内関係法令が改正され、韓国漁船は、我が国の許可を受けなければ 排他的経済水域(EEZ)で操業できないこととなりました。
海上保安庁では、新協定発効後、許可を受けていない韓国漁船が多数操業することが予想される日本海、九州周辺、東シナ海等の主要な漁場において、巡視船艇・航空機による監視取締りを強化し、発効日翌日の1月23日には、長崎県対馬沖の我が国 EEZにおいて、4隻の韓国漁船を無許可操業等で検挙しました。
相次ぐ覚せい剤大量密輸入事犯の摘発 海上保安庁は、1月、島根県浜田港におけるホンジュラス籍貨物船乗組員等による覚せい剤約101kg密輸入事件、また4月には、鳥取県境港における中国籍貨物船乗組員等による覚せい剤約101.1kg密輸入事件、さらに10月には、鹿児島県笠沙町黒瀬海岸における台湾籍漁船乗組員等による覚せい剤約564.6kg(過去最高の押収量)密輸入事件等、覚せい剤大量密輸入事件を摘発しました。
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▲ホンジュラス籍貨物船覚せい剤(約101kg)密輸入事件 |
10月22日、パナマ籍貨物船「ALONDRA RAINBOW」号(総トン数7,762トン、日本人2名を含む乗組員17名)が マラッカ・シンガポール海峡を航行中、銃とナイフで武装した 海賊により襲撃を受け、積荷ごとハイジャックされるという事件が発生しました。同船乗組員は海賊船に監禁された後、救命筏に移されて解放され、約10日間漂流した後、タイのプーケット島沖で漁船に発見され全員無事保護されました。同船は、インド南西沖を航行中のところを発見され、11月16日、インド沿岸警備隊等により制圧されました。海上保安庁では、巡視船・航空機を同船が航行すると推測される東南アジアの航路付近海域まで派遣し、同海域を捜索しました。
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▲パナマ籍貨物船「ALONDRA RAINBOW」号 |
ディファレンシャルGPSの全国運用開始 ディファレンシャルGPS(DGPS)は、米国が運用するGPSを利用した測位の誤差を1m以下にすることが可能なシステムです。我が国では平成7年にDGPS局の整備に着手し、平成9年3月、剱埼(つるぎさき)(神奈川県)及び大王埼(だいおうさき)(三重県)の2局において運用を開始した後、順次整備を進め、同11年4月、日本周辺海域をカバーする合計27局による全国運用を開始しました。
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▲ディファレンシャルGPSセンター |
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