海上保安レポート 2008

●はじめに


特集1 海上保安庁 激動の10年

特集2 海洋基本法を見据えた海上保安庁の取組み〜新たな海洋立国の実現に向けて〜

1.体制を充実させて

2.海洋調査により海を拓く

3.大規模海難ゼロに向けて


特集3 海上保安庁のあゆみ


海上保安庁の任務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


目指すは海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


海上保安制度創設60周年記念 特集2 海洋基本法を見据えた海上保安庁の取組み - 新たな海洋立国の実現に向けて
特集2 海洋基本法を見据えた海上保安庁の取組み

特集2 海洋基本法を見据えた海上保安庁の取組み
 ここまで述べてきた様々な事案について、海上保安庁では、その時々において総力をあげて、国民皆さんの理解と協力を得ながら、さらには国内の関係機関、国外の海上保安関係機関などと緊密に連携しながら、最善と考えられる対策を実施してきたところです。しかしながら、国内外の関係機関との緊密な協力にもかかわらず銃器・薬物等は我が国に流入してきており、また、テロ、不審船等への警戒監視の手を緩めることもできません。また、関係者の努力にもかかわらず海難事故は頻発し、多くの尊い人命が失われています。台風、地震など自然災害への備えも怠ることはできません。
 また、東シナ海での資源開発、海底地形にかかる呼称問題などを通じて、我が国の権利が及ぶ海そのものがどこまで広がっているのか、どのような地形となっているのかなど、これまで以上に海の権利と利益について国民の関心が高まってきています。
 このような状況において、平成19年7月20日には、「新たな海洋立国の実現」に向けて政府一丸となって海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために海洋基本法(平成19年法律第33号)が施行され、同法に基づき海洋基本計画(平成20年3月18日閣議決定)が策定されました。
新たな海洋立国の実現に向けて
 海洋基本法や同法に基づき作成された海洋基本計画により、今後「新たな海洋立国の実現」に向け様々な取り組みが具体化していくこととなります。海洋基本法では、海洋に関する国の基本的な施策として、海洋の安全確保や海洋調査の推進などが定められるとともに、海洋基本計画においても、経済の発展及び生活の安定に必要な物資の多くを海上輸送に依存している我が国にとって、海洋権益が平和と安全を確保する上で重要であるとし、海洋権益の確保のためには周辺海域等における秩序の維持、海上交通の安全に関する取組等を推進する必要があるとしています。さらに、同計画においては、これら海洋に関する施策を企画、実施するためには、海洋状況の把握等に必要な調査の実施が不可欠であり、海洋調査の着実な実施、海洋管理に必要な基礎情報の収集・整備等を推進していくとしています。
 海上保安庁はこれら施策を積極的に推進していくこととしており、具体的には、
●海上における巡視等に必要不可欠な巡視船艇や航空機の代替整備、様々な事件・事故に直ちに対応するための複数クルー制拡充といった体制の充実
大陸棚の限界画定のための調査や海洋の開発・利用・保全等に必要となる基盤的情報を整備するための海洋調査の推進
●大規模海難ゼロに向け、船舶の航行環境等を踏まえた新たな海上交通の安全施策の推進

などに取り組み、新たな海洋立国の実現に向けその一翼を担っていきます。
以下、この章ではこれら3つの取組みについて皆さんにご紹介していきます。
海洋基本法の概要

1.本法の目的
海洋が人類等の生命を維持する上で不可欠な要素であるとともに、海洋法条約等に基づく国際的協調の下、新たな海洋立国を実現することが重要であることにかんがみ、海洋に関し、基本理念を定め、国、地方公共団体等の責務を明らかにし、海洋基本計画の策定その他海洋に関する施策の基本となる事項を定めるとともに、総合海洋政策本部を設置することにより、海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進する。

2.海洋政策の基本理念
(1)海洋の開発及び利用と海洋環境の保全との調和、(2)海洋の安全の確保、(3)科学的知見の充実、(4)海洋産業の健全な発展、(5)海洋の総合的管理、(6)国際的協調

3.国、地方公共団体、事業者、国民の責務

4.海洋基本計画
政府は、海洋に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、海洋基本計画を定めなければならない。

5.海洋に関する国の基本的施策
(1)海洋資源の開発及び利用の推進、(2)海洋環境の保全、(3)排他的経済水域等の開発等の推進、(4)海上輸送の確保、(5)海洋の安全の確保、(6)海洋調査の推進、(7)研究開発の推進、(8)海洋産業の振興、(9)沿岸域の総合的管理、(10)離島の保全等、(11)国際協力の推進、(12)海洋に関する国民の理解増進

6.海洋政策担当大臣の設置

7.総合海洋政策本部の設置
海洋政策を集中的かつ総合的に推進するため、内閣に、総合海洋政策本部を置く。