また、東シナ海での資源開発、海底地形にかかる呼称問題などを通じて、我が国の権利が及ぶ海そのものがどこまで広がっているのか、どのような地形となっているのかなど、これまで以上に海の権利と利益について国民の関心が高まってきています。
このような状況において、平成19年7月20日には、「新たな海洋立国の実現」に向けて政府一丸となって海洋に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために海洋基本法(平成19年法律第33号)が施行され、同法に基づき海洋基本計画(平成20年3月18日閣議決定)が策定されました。
新たな海洋立国の実現に向けて
海洋基本法や同法に基づき作成された海洋基本計画により、今後「新たな海洋立国の実現」に向け様々な取り組みが具体化していくこととなります。海洋基本法では、海洋に関する国の基本的な施策として、海洋の安全確保や海洋調査の推進などが定められるとともに、海洋基本計画においても、経済の発展及び生活の安定に必要な物資の多くを海上輸送に依存している我が国にとって、海洋権益が平和と安全を確保する上で重要であるとし、海洋権益の確保のためには周辺海域等における秩序の維持、海上交通の安全に関する取組等を推進する必要があるとしています。さらに、同計画においては、これら海洋に関する施策を企画、実施するためには、海洋状況の把握等に必要な調査の実施が不可欠であり、海洋調査の着実な実施、海洋管理に必要な基礎情報の収集・整備等を推進していくとしています。海上保安庁はこれら施策を積極的に推進していくこととしており、具体的には、
●海上における巡視等に必要不可欠な巡視船艇や航空機の代替整備、様々な事件・事故に直ちに対応するための複数クルー制拡充といった体制の充実
●大陸棚の限界画定のための調査や海洋の開発・利用・保全等に必要となる基盤的情報を整備するための海洋調査の推進
●大規模海難ゼロに向け、船舶の航行環境等を踏まえた新たな海上交通の安全施策の推進
などに取り組み、新たな海洋立国の実現に向けその一翼を担っていきます。
以下、この章ではこれら3つの取組みについて皆さんにご紹介していきます。