海難の現状及びその原因
▲小型旅客船の乗揚げ海難 |
海難の特徴として、大型船である貨物船やタンカー等の海難は、そのほぼ半数が船舶のふくそうする海域(東京湾、伊勢湾、瀬戸内海)で発生しており、また、100トン以上の船舶の海難原因を外国・日本籍船別に見ますと、外国籍船の海難原因は操船不適切によるものが多く、日本籍船は見張り不十分が多く見受けられます。
他方、小型船である漁船やプレジャーボート等の海難は、全海難隻数の約7割程度を占めており、死傷者を伴う海難が多く発生しています。
今後の施策展開にあたって
これまで海上保安庁では、普遍的な社会の要請である海難の未然防止に向け「大規模海難ゼロ」というスローガンを掲げ、様々な施策に取り組んできましたが、昨今の、輸送効率の向上及び輸送コストの縮減を図るための船舶の大型化、電子・通信技術の進展等に伴う新たな航行支援システムの整備、海洋基本法の施行による国の責務としての効率的な海上輸送や海上の安全確保の明確化といった航行環境、社会情勢の変化等を踏まえた上で、海上交通の安全性と効率性の向上をバランスよく実現していくことが今後とも重要であると考えています。
このため、これからの海上交通の安全施策を展開していくにあたり、
●航行環境の変化を踏まえた適切かつ効果的な安全対策を講じるための海事関係行政機関との連携強化や海難の分析及び対策の企画立案機能の強化
●新たな交通ルールの設定など制度面の充実、AIS等高度な航海装置の普及を図るためのソフト面の施策の充実や新技術の導入
●災害に強い航路標識、地球温暖化への対応等航路標識の機能の高度化
●航路標識の設置・管理に関する制度の見直し、再構築
などの基本的な方向性を定めた上で、海上交通の安全性を確保しつつ効率性の向上を目指した新しい施策を取りまとめた中長期的なビジョンの策定作業を進めています。
なお、同ビジョンについては、国土交通大臣の諮問機関である交通政策審議会に対して諮っており、平成20年度中に答申が得られる予定です。