海上保安制度創設60周年記念 特集1 海上保安庁 激動の10年 > 2003年
2003年(平成15年)
海上保安庁の動き
船舶の大型化や高速化、また AIS(船舶自動識別装置)等の新たな航行支援装置の登場等船舶交通をとりまく環境の変化へ的確に対応し、安全性の更なる向上と効率性に配慮した船舶交通環境をつくるため、航路標識の整備等を実施していた灯台部と航行管制や航行安全指導等を実施していた警備救難部航行安全課を統合し、「交通部」を発足させ、海上交通行政の新たな時代が始まりました。
拉致やミサイル問題等北朝鮮をめぐる問題に関心が高まるなか、 九州南西海域における工作船事件の乗組員10名について、被疑者死亡のまま海上保安官に対する殺人未遂等の容疑で送致、引き揚げられた工作船の船体や武器等は一般公開され、多くの国民の関心を呼びました。また、7か月ぶりに新潟港に入港した北朝鮮籍貨客船「万景峰92」号に対しては、海上警備や立入検査等を実施し厳格に対処しました。
社会の動き
株価がバブル以来の最安値を更新後、景気が緩やかな回復傾向を示す中、社会では長崎市の幼児殺害事件など少年・少女による凶悪犯罪が続発しました。海外では、大量破壊兵器保有疑惑やフセイン元大統領の拘束など世界の目がイラクに向けられる中、テロによる日本人外交官2人の殺害が発生したほか、日本は自衛隊派遣を決定しました。北朝鮮の核問題で初の6か国協議が開催され、また、中国、香港、ベトナム等でSARSが集団発生しました。
北朝鮮籍貨客船
「万景峰92」号入港への対応
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▲新潟港入港中の「万景峰92」号 |
8月25日、北朝鮮籍の貨客船「万景峰92」号が約7か月ぶりに新潟港に入港しました。海上保安庁では、当時の日朝関係を踏まえた北朝鮮籍船舶に対する監視取締体制の強化の政府方針に基づき、第九管区海上保安本部(新潟県)に対策本部を設置し、巡視船艇・航空機による入港前からの警戒の実施や、関係機関と連携した厳正な立入検査を実施しました。
さらに、9月17日、「万景峰92」号が出港時に最大搭載人員を超えて旅客を乗船させたことにより、新潟海上保安部(新潟県)が船舶安全法違反(定員超過)の容疑で船長を新潟区検察庁に送致しました。
中国籍貨物船
中国人密航・覚せい剤不法所持事件
10月4日、青森県八戸港に入港した中国籍貨物船「JING GANG SHAN」号(総トン数3,998トン、乗組員20名)の機関室内に巧妙に隠匿された覚せい剤約1.9kgを発見、押収するとともに、船内の天井裏に潜伏していた中国人密航者7名を発見し、出入国管理及び難民認定法違反(不法入国)で逮捕しました。
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▲中国籍貨物船「JING GANG SHAN」号 |
相次ぐ大規模地震への対応
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▲宮城県北部を震源とする地震への対応 |
宮城県沖を震源とする地震(5月26日)、宮城県北部を震源とする地震(7月26日)、十勝沖地震(9月26日)等日本各地で多数の地震が発生し、大きな被害をもたらしました。海上保安庁では、地震発生直後に巡視船艇及び航空機を出動させ、被害状況調査や捜索救助活動等の災害応急対策を実施し、特に、1日に3度も震度6弱以上を記録した宮城県北部を震源とする地震においては、宮城県の要請を受け、被災者への毛布の提供等支援活動を実施しました。
「船の科学館」に工作船を展示
(財)海上保安協会では、海上保安庁及び日本財団の支援を受け、平成13年12月に九州南西沖で沈没した工作船及び武器等の展示物を同15年5月31日から約9か月にわたり「船の科学館」で展示しました。当時、展示の反響が非常に大きく、見学者が約163万人に達し、展示期間を当初予定から約5か月延長しました。
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▲展示中の工作船等 |
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▲海上阻止訓練 |
PSIの海上阻止訓練に初参加
「拡散に対する安全保障構想(PSI)」は、大量破壊兵器・ミサイル及びそれらの関連物資のテロリスト等への拡散を阻止するために、米国の提唱により始まった新たな国際的な取組みです。このPSIに基づく初の阻止訓練として、9月12日〜14日、米国、オーストラリア、フランスと連携し、オーストラリア沖で実施された海上阻止訓練に巡視船「しきしま」や特殊部隊等が参加しました。
アルジェリア地震災害に国際緊急援助隊救助チームを派遣
5月22日未明、アルジェリアの首都アルジェ東方ブメルデス県を震源とするマグニチュード6.7の地震が発生し、死者2,266名、負傷者1万名以上を数えたほか、多くの家屋等が被害を受けました。日本政府は、国際緊急援助隊救助チームの派遣を決定、海上保安庁から14名の職員を派遣しました。
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▲国際緊急援助隊による救助活動 |
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