海上保安制度創設60周年記念 特集1 海上保安庁 激動の10年 > 2002年
2002年(平成14年)
海上保安庁の動き
奄美大島沖で沈没した工作船を水深90メートルを超える海底から引き揚げ、「工作船」の全容を明らかにし、国民に大きな衝撃を与えました。これを受け、相手側の攻撃能力を想定した巡視船等の建造、装備・運用体制の強化を進めました。
このほか、日韓共催によるワールドカップサッカー大会に伴いテロ・フーリガンによる暴動を未然に防止するため、日韓双方の海上保安機関による捜査等の協力関係を構築のもと、合同訓練の実施や日韓主要航路における旅客船への 警乗等大会期間中の安全確保に万全を尽くしました。
また、ヘリコプターから降下して傷病者を救助する「空飛ぶ救急隊」 機動救難士が発足、さらに(社)日本水難救済会の洋上救急事業に協力し、海上保安庁の航空機等で医師等を洋上の現場に運び応急治療を施し搬送する洋上救急の出動が500件に達しました。
水路部では、情報技術の進歩や海洋情報のユーザーの多様化に対応するため組織を見直すとともに、「海洋情報部」に名称変更しました。また、この年、世界標準である世界測地系に変更した日本周辺の海図を整備するとともに、マリンレジャー愛好者への情報提供として 沿岸域情報提供システムの本格運用を始めました。
社会の動き
初めての日朝首脳会談が開かれ、北朝鮮が拉致について謝罪、24年ぶりに被害者5名が帰国しました。引き続き株価が下落し日本経済が低迷する中、日本を代表する企業の不祥事が相次ぎました。海外では、国連安保理を含めたイラク情勢、北朝鮮の核問題等をめぐり世界が緊迫感に包まれるとともに、バリ島で爆弾テロ事件が発生するなどテロは世界に拡散し続けました。
工作船の引揚げ 平成13年12月に沈没した工作船の船体引揚げに関する政府方針決定を受けて、同14年6月25日から引揚げ作業を開始し、相次ぐ台風の来襲等厳しい自然条件の下、9月11日、水深90mを超える海底から船体を作業台船上に引き揚げました。その後、作業台船を鹿児島港外へ回航、船体に残された武器類や自爆装置の安全化作業を実施し、船内において小型舟艇、水中スクーター等を確認したほか、「金日成バッチ」等多数の証拠物を回収しました。また、捜査の過程で同船が北朝鮮の工作船であったこと、薬物の密輸入に関与していた疑いが濃いことなどが判明しました。
|
|
▲引揚げられた工作船 |
▲工作船に搭載されていた二連装機銃 |
2002年ワールドカップサッカー大会開催に伴う海上警備を実施
|
▲臨海部キャンプ地の警戒 |
5月31日から6月30日までの31日間、日韓共催による2002年ワールドカップサッカー大会が開催されました。大会期間中は、旅客船を利用した日韓間及び国内の観客の移動が活発になることから、この機会に乗じたテロやフーリガンによる暴動の発生が懸念されたため、韓国海洋警察庁と連携した合同訓練や旅客船への 警乗などを実施しました。また、臨海部のキャンプ地及び試合会場の警戒など海上警備に万全を期しました。
|
|
▲釜山港における日韓海上警備合同訓練 |
▲旅客船内の警戒 |
大陸棚調査に関する関係省庁連絡会議の設置
国連海洋法条約では、海底の地形や地質がある一定の条件を満たせば、200海里を超えて 大陸棚の限界を設定することができると定めています。 大陸棚の限界延長のためには、 国連海洋法条約に基づき設置されている大陸限棚界委員会へ 大陸棚の地形・地質に関する情報を提出し、同委員会の審査を経た勧告に基づいて 大陸棚の限界を設定する必要があります。我が国の提出期限が平成21年であることから、着実かつ効率的に 大陸棚調査を推進するため、同14年6月7日に「大陸棚調査に関する関係省庁連絡会議」が内閣に設置され、関係省庁が一丸となって調査に取り組むことになりました。
2月、プレジャーボート、漁船等の船舶運航者や磯釣り、マリンスポーツ等のマリンレジャー愛好者等に対して、電話やインターネット等を活用して海の安全に関する情報をリアルタイムに提供することができる 沿岸域情報提供システム(MICS)を全国に先がけて、室蘭海上保安部(北海道)ほか5か所で運用開始しました。
|
▲MICSホームページ |
経緯度の基準を日本測地系から世界測地系に移行 世界測地系を利用しているGPS(全地球測位システム)の普及等を踏まえ、平成13年6月30日に水路業務法を改正して海上における経緯度の基準を「日本独自の基準である日本測地系」から「世界標準である世界測地系」に移行させました。また、海上保安庁では、測地系の取り違いによる海上交通の混乱を避けるため、同14年3月までに、日本周辺の全ての 海図を世界測地系に変更しました。
|