(1)尖閣諸島
尖閣諸島は、沖縄群島西南西方の東シナ海に位置し、魚釣島、南小島、北小島、久場島、大正島からなり、一番大きな魚釣島を起点とすると、石垣島まで約170km、沖縄本島まで約410km、中国大陸まで約330kmの距離があります。 我が国は、明治18年以降再三にわたって尖閣諸島の現地調査を行い、単に無人島であるのみならず、清国の支配が及んでいないことを慎重に確認した上、明治28年1月14日、閣議決定により、同諸島を正式に我が国の領土に編入しました。
●尖閣諸島位置関係図
戦後は、サンフランシスコ平和条約に基づき、尖閣諸島は南西諸島の一部として米国の施政権下に置かれ、昭和47年5月、沖縄復帰とともに我が国に返還され現在に至っています。
しかし、昭和43年、日本、韓国及び台湾の海洋専門家が中心となり、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の協力を得て東シナ海海底の学術調査を行った結果、東シナ海の大陸棚には豊富な石油資源が埋蔵されている可能性があることが指摘され、これが契機となって、にわかに近隣諸国などの注目を集めるようになりました。
中国は、昭和46年12月から公式に尖閣諸島の領有権を主張し始めました。平成4年2月に施行した「中華人民共和国領海及び接続水域に関する法律」においては、尖閣諸島は中国の領土であると明記しました。
▲活動家船舶 |
▲魚釣島灯台 |
また、平成17年2月、海上保安庁は、航路標識法に基づく所管航路標識として、「魚釣島灯台」の管理を開始しました。
現在の魚釣島灯台は、昭和63年に日本の政治団体が設置したものですが、これを所有していた漁業者から所有権放棄の意思が示されたため、民法の規定により、国庫帰属財産となりました。
魚釣島灯台の取り扱いについては、長年、付近海域での漁ろう活動や船舶の航行安全に限定的とはいえ寄与している実績などを踏まえ、政府全体の判断として、その機能を引き続き維持することとなり、必要な知識、能力を有する海上保安庁が保守・管理を行うこととなりました。
海上保安庁では、直ちに、魚釣島灯台の設置を航行警報により航行船舶に周知し、官報に告示するとともに、海図へ記載しました。その後は、他の灯台と同様、定期的に点検・整備を行い、魚釣島灯台の適正な保守・管理を行っています。
(2)海洋調査船
▲中国海洋調査船「科学1号」 |
▲中国海洋調査船「奮闘4号」 |
こうした東シナ海における無秩序な状況を解決するため、平成13年、我が国と中国との間で、東シナ海における相手国の近海で海洋の科学的調査を行う場合は、調査開始予定の2ヵ月前までに、外交ルートを通じ通報することを内容とする「海洋調査活動の相互事前通報の枠組み」について合意し、同年2月から運用が開始されました。その結果、近年は、東シナ海において我が国の同意を得ない調査活動は減少し、平成17年には、我が国の同意を得ない調査活動は確認されませんでした。
一方、東シナ海以外の我が国の排他的経済水域においても、平成15年及び平成16年には、国連海洋法条約に基づく手続きを踏んでいない中国の調査船が出没しており、最近では沖ノ鳥島周辺海域における中国船による調査活動が新たな問題として浮上しています。
我が国は、国連海洋法条約などに基づき、排他的経済水域において、我が国の同意なく海洋の科学的調査を行うことは認めないこととしています。平成17年は、我が国の同意を得ない調査活動は確認されませんでしたが、引き続き、海上保安庁では、外国の海洋調査船に対して、巡視船艇及び航空機による監視を行い、我が国の同意のあるものに対しては、同意の内容と合致しているか確認し、同意のない又は同意の内容と異なるものに対しては、現場海域において中止要求を行うとともに、外交ルートによっても調査活動の中止の申し入れを行うこととしています。
(3)沖ノ鳥島
▲沖ノ鳥島周辺をしょう戒する 巡視船「せっつ」 |
最近、中国は、沖ノ鳥島は「岩」であり、国連海洋法条約第121第3項「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩は、排他的経済水域又は大陸棚を有しない。」の規定により、沖ノ鳥島を起点としている我が国の領海については認めているものの、排他的経済水域及び大陸棚は認められないと主張しています。また、これまでにも同島周辺の我が国の排他的経済水域において、国連海洋法条約に基づく手続きを踏むことなく、我が国の同意なしに調査活動を行っている中国海洋調査船が確認されています。
我が国は、昭和6年7月、当時いずれの国にも属さないと認められていた沖ノ鳥島を、東京都小笠原支庁管轄下に編入し、それ以来、同島を「島」として有効支配してきました。昭和52年からは同島を起点として200海里の漁業暫定水域を設定しましたが、いかなる国からも異論を唱えられることはありませんでした。これは、同島が歴史的にみても既に我が国が支配する「島」としての地位を確立していたことを示しています。
国連海洋法条約では、「島とは、自然に形成された陸地であって、水に囲まれた、高潮時においても水面上にあるものをいう。」と定義し、このような「島」は領海、接続水域、排他的経済水域及び大陸棚を有することが定められています。沖ノ鳥島は、まさにこの定義に該当する「島」であり、中国が最近になって「岩」であると主張し始めたことについては、根拠のないものであり、受け入れられるものではありません。
海上保安庁では、我が国の海洋権益を適切に保全していくため、沖ノ鳥島の周辺海域においても巡視船及び航空機によるしょう戒を行っています。
▲沖ノ鳥島全景
(4)東シナ海における資源開発
豊富な地下資源が埋蔵されていると指摘のある東シナ海の大陸棚については、日中両国の主張が激しく衝突しているため、未だに境界を画定するには至っていません。我が国は、地理的中間線により境界を画定すべきと主張しているのに対し、中国は、中国大陸の自然延長の終点である沖縄トラフが境界であると主張しています。中国が主張している自然延長については、国連海洋法条約上、大陸棚を200海里を超えて延長する場合にのみ適用される理論であり、両国間の距離が400海里に満たないことから、東シナ海には適用され得ないものです。また、我が国が主張する地理的中間線に基づく解決は、現在の国際判例では定着している考え方であることからも、到底中国の主張は受け入れられるものではありません。
このような状況の中、中国は東シナ海の日中地理的中間線付近に存在する、平湖油ガス田、樫(中国名:天外天)ガス田及び白樺(中国名:春暁)油ガス田などに採掘用の海洋構築物を設置し、一部では既に生産を開始させています。
資源エネルギー庁が沖縄北西海域において行った探査結果によれば、白樺油ガス田については、その構造が日中地理的中間線の日本側まで連続していることが明らかとなり、また、樫ガス田についてもその可能性があることが示されました。
我が国は、中国に対し、資源開発問題について話し合う東シナ海等に関する日中局長級協議などを通して、日中地理的中間線付近で行われている中国の資源開発の中止を求めていますが、中国は、協議には応じているものの、中国の資源開発は中国側の海域で行われていることを理由に開発中止には応じておらず、依然として開発を着々と進めている状況です。
海上保安庁では、引き続き航空機によるしょう戒を実施し、中国の開発状況の監視など当海域の状況把握に努め、関係省庁へ情報提供を行うこととしています。
●東シナ海における資源開発