平成17年9月28日、午前5時53分、海上保安庁運用司令センター(東京都)は根室沖南東約45kmに小型船が転覆しているとの通報を受けました。調査の結果、転覆船はさんま漁船「第三新生丸」(19トン、乗組員8名)であることが判明し、船体には亀裂や衝突されたような痕が確認されました。
同日午前10時頃、現場に到着し転覆船の船底上にはい上がった潜水士が、水中ナイフの柄で船底をたたいたところ、
「ガン、ガン、ガン」
と、返事をするような音があり、生存者を確認。その後、特殊救難隊が転覆船の船内に進入し、中で生存していた1名を救助しました。しかし、残念ながらこの事故により7名の方が亡くなりました。
第三新生丸の船体の状況や、生存者の証言などから、同船は衝突された可能性が高いと判断し、該当する船舶の洗い出しを行ったところ、韓国の釜山に入港しているイスラエル籍コンテナ船「ZIM ASIA」(41,507トン乗組員21名)が衝突したとの疑いが濃厚になりました。
折しもこの時期に第6回北太平洋地域海上保安機関長官級会合が神戸で開催されており、海上保安庁長官から韓国海洋警察庁庁長に対し釜山入港中のZ号の現地調査を依頼したところ快諾され、海洋警察庁の迅速な対応によりZ号から塗膜片などの関係資料を入手することができました。同庁との普段からの連携・協力が有効に発揮され、このように早期の対応が可能となりました。
その後、Z号の塗膜片と第三新生丸に付着した塗膜片との同一性を海上保安試験研究センター(東京都)にて鑑定を行い、Z号を衝突相手船と断定しました。