海上保安レポート 2006

●はじめに


■TOPICS 海上保安の一年


■特集1 国際展開する海上保安庁

1. 海をつなぐ連携

2. 我が国の海洋権益保全のために

■特集2 刷新図る海保の勢力


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える


海保のサポーター


海上保安官を目指す!


語句説明・索引


図表索引


資料編


特集1 > 国際展開する海上保安庁 > 2. 我が国の海洋権益保全のために > はじめに
2. 我が国の海洋権益保全のために はじめに

沖ノ鳥島
▲沖ノ鳥島
樫(中国名:天外天)ガス田に建設された海洋構築物
▲樫(中国名:天外天)ガス田に建設された
海洋構築物
 19世紀以来、海は「広い公海」と「狭い領海」に区分され、公海は、航海や漁業のために各国に解放され、自由に使用できる「公海自由の原則」が確立していました。
 しかし、平成6年に国連海洋法条約が発効し、排他的経済水域大陸棚への沿岸国の管轄権が認められたことから、世界各国が「海洋の囲い込み」といわれる考え方に基づき、海洋政策を積極的に展開しています。
 この世界的な流れは、東アジア地域においても例外ではありません。特に、近年、驚異的な経済成長を続け、大国への道を歩み始めた中国は、海洋政策について極めて意欲的に取り組んでいます。中国は、我が国周辺海域における海洋調査や東シナ海におけるエネルギー開発などを活発に行い、この20年間に海洋の情報整備や調査研究などによって蓄積した情報は、既に我が国を凌駕しているとの指摘もあり、また、東シナ海の日中地理的中間線付近に、石油・天然ガス採掘用の海洋構築物を既に複数設置しています。
 中国に限らず、隣国の韓国や我が国も海洋施策を積極的に展開しています。そのため、我が国周辺海域では、周辺各国の思惑が競合することも多く、我が国の海洋権益を保全することの重要性が強く認識されています。
 このほかにも、第二次世界大戦末期や戦後の混乱期に生じた北方領土、竹島に係る領土問題、石油埋蔵の可能性を発端とする尖閣諸島の領有権主張問題、また、最近では、中国が我が国の領土である沖ノ鳥島を岩であると主張する問題など、我が国の海洋権益を脅かす問題が山積しています。
 ここでは、我が国の隣国、地域ごとに生じている海洋権益に関する問題を説明し、その保全のための海上保安庁の取組みを紹介します。

領海・排他的経済水域・公海
領海・排他的経済水域・公海 領海
海に面している沿岸国の主権の及ぶ海域の部分であり、沿岸国が基線から12海里(約22km)を超えない範囲で設定しています。領海における沿岸国の主権は、領海の上空、海底及び海底の下にまで及び、漁業その他の生物資源の採捕や海底鉱物資源の採掘に関する独占権を有します。

排他的経済水域
領海の外側で基線から200海里を超えない範囲で、沿岸国に同水域の一切の漁業及び鉱物資源に対する排他的な管轄権及び海洋汚染を規制する権限が認められている水域のことです。

公海
特定の国の主権に属さず、世界各国が共通に使用し得る海洋のことです。