安心できる暮らしと環境を守るために
自然災害対策
3 今後の取組み
(1)迅速・的確な応急体制の確立に向けて
海上保安庁では、地震等の自然災害が発生した場合、巡視船艇・航空機による被害状況調査や救助活動等災害応急対策を迅速・的確に行います。
また、平成14年4月に中央防災会議で東海地震の地震防災対策の強化地域の見直しが行われたことから、海上保安庁の東海地震防災対策の見直しを行います。
さらに、次のような資料を整備し、防災関係機関に提供します。
(1) 住民の避難及び支援物資の搬入等のために防災情報を網羅した「沿岸防災情報図」
(2) 火山噴火活動の総合的な基礎情報をデータベース化した「海域火山基礎情報図」
(3) 海域における津波の情報を網羅した「津波防災情報図」
【海域火山基礎情報図】
海底地形鳥瞰図
・海底噴火位置の特定
・危険海域の把握
海底地質構造図
・火山活動史の解明
磁化強度分布図
・マグマ溜まりの位置推定
震源分布図
・火山の活動状況の推定
【沿岸防災情報図】
【各機関の連携による住民の救出】
海上保安庁の巡視船艇・航空機
自衛隊の艦艇・航空機
警察・消防の船艇・航空機
【提供】
海上保安庁巡視船艇のみならず防災関係機関に提供
・都道府県市町村
・消防、警察
・陸、海、空自衛隊
【津波防災情報図(進入図)】
(2)地震発生の予測に向けた調査
我が国は、太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレート及びユーラシアプレートが複雑に接する場所に位置しています。巨大地震の発生は、これらのプレートの動きにより生じた歪みが原因と考えられていますが、これまでは、海底の地殻の変動を観測する手段がなく、海域の巨大地震発生の予測精度を高めるため、その開発が望まれていました。海上保安庁では、東京大学と共同で海底地殻変動の観測・解析技術を開発し、平成12年7月の三陸沖を手始めに、プレート境界付近に海底基準局を順次設置し、海底地殻変動観測網の整備を行っています。
近年、東海地震とともに発生の危険性が高まっていると指摘されている東南海・南海地震の震源域である南海トラフ沿いについても海底基準局を設置し、東南海・南海地震予測の精度向上のためのデータの収集を目指していくこととしています。平成15年中には、潮岬東方沖及び南東方沖に海底基準局を設置し、観測を開始する予定です。
このような海底における地殻変動の定常的な観測は、世界でも初めてのことであり、地震発生の予測精度向上のための重要なデータが得られると期待されています。
(3)海域火山活動の監視
日本周辺には、多くの火山島及び海底火山があります。海上保安庁では、航空機によってそれらのうち活動している31カ所の海域火山の監視を行っています。さらにそのうち7カ所の海域火山については、測量船や特殊搭載艇により海底地形、地質構造の調査により火山付近の地殻構造やマグマの位置の把握に努め、基礎情報図の整備を行っています。
特に、海底火山の活動が活発となっている海域では、通常の測量船による調査は大変危険なことから、高精度な調査機器を搭載した特殊搭載艇「マンボウ」や測量船「じんべい」をあらかじめプログラムされた計画に従って無人で操作し、変色水の採水、精密な海底地形測量、水温などの各種データを速やかに収集します。これらのデータは航行船舶の安全情報として活用されるほか、防災対策の基礎資料として活用されます。
【測量船「じんべい」を利用した海底火山活動の調査概念図】
【海底地殻変動観測の概念図】
【海底基準局の配置図】
ミラートランスポンダ
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