治安を維持するために

外国人漁業の取締り

1目標

 外国人漁業取締り目標は、我が国の水産資源の保護及び漁業秩序の維持のため、摘発水準を向上させることです。
 海上保安庁では、外国漁船が多数操業している日本海、九州周辺、東シナ海等の主要な漁場に重点を置いて、巡視船艇・航空機を配備し、外国漁船の監視取締りを行っています。
 外国人漁業の取締りにおいては、次のような悪質な事犯が多く、時には海上保安官が負傷する事態にも発展するなど、危険で困難を伴います。
  • 発見されると漁具を切断し逃走
  • 高出力エンジンを搭載した高速船を使用して逃走
  • 捕捉を逃れるため蛇行するなど、海上保安官の移乗を妨害
  • 移乗した海上保安官に対する暴行傷害
  • 船団で航行することにより巡視船艇の追跡を妨害
 このような外国漁船を取り締まるためには、効果的な巡視船艇・航空機の配備・運用や捕捉能力の向上、情報収集・分析体制の強化のほか、海上保安庁以外の関係機関との連携協力等が必要不可欠です。
 これらの措置により摘発水準が向上したかどうかは、検挙した件数だけではなく、検挙した事犯の困難性等を考慮して総合的に判断します。

2目標の達成

 平成13年の不法操業を行う外国漁船の検挙件数は前年に比べ減少していますが、これまでに幾度となく悪質な不法操業を繰り返すなど摘発が非常に困難な韓国大型トロール漁船を巡視船艇と航空機の連携によって捕捉(事例1参照)したほか、巡視船が水産庁漁業監視取締船と連携協力して韓国漁船を捕捉したという事例(事例2参照)など、関係機関との連携強化施策の効果が現れているものがあります。
[事例1]
 平成13年9月8日、福岡航空基地所属のヘリコプターが壱岐島西方のEEZ*1漁業等禁止海域内において操業中の韓国大型トロール漁船を発見し、厳原海上保安部に連絡しました。厳原海上保安部では、直ちに巡視船艇5隻を現場に向かわせ、逃走を続ける大型トロール漁船に強行接舷を実施して海上保安官を移乗させ、違反漁船船長をEZ漁業法*2違反(無許可操業)で逮捕しました。(海上保安最前線のページを参照)
[事例2]
 平成13年6月1日、日本海能登半島沖の我が国排他的経済水域内において、水産庁漁業監視取締船が、韓国かに籠漁船に立入検査を実施するため停船命令を発したところ、これを無視して逃走しました。この連絡を受けた第九管区海上保安本部(新潟市)は、ヘリ搭載型巡視船及び高速特殊警備船を現場に急行させました。現場海域がはるか沖合であったため追跡が長時間に及びましたが、高速特殊警備船が性能を発揮して、当該漁船船長を漁業法違反(立入検査忌避)で逮捕しました。


蛇行しながら逃走する外国漁船
蛇行しながら逃走する外国漁船
逃走する外国漁船に飛び移る海上保安官
逃走する外国漁船に飛び移る海上保安官


*1EEZ(Exclusive Economic Zone )排他的経済水域
領海に接続する水域であって基線から200海里までをいう。この水域では以下の主権的権利が認められている。
(1)天然資源の開発等に係る主権的権利
(2)人工島、設備・構築物の設置・利用に係る管轄権
(3)海洋の科学的調査に係る管轄権
(4)海洋環境の保護及び保全に係る管轄権


*2EZ漁業法 排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律

3不法操業事犯の分析

 平成13年の外国漁船の無許可操業等の検挙件数は16隻(領海内2隻、排他的経済水域内14隻)で、前年の27隻(領海内14隻、排他的経済水域内13隻)に比べ11隻減少しました。検挙件数が減少したのは、我が国領海内における中国及び韓国漁船の検挙が無かったためです。
 この原因としては、平成11年1月の新日韓漁業協定、平成12年6月の新日中漁業協定の発効以降、我が国の韓国漁船及び中国漁船に対する取締り海域が大きく拡大されましたが、同海域での監視・取締りの強化が影響したものと考えられます。

外国漁船の不法操業事犯検挙件数の状況          (単位:隻)
外国漁船の不法操業事犯検挙件数の状況
(注)排他的経済水域には、漁業専管及び特定海域に係る漁業等の禁止海域を含む。

4目標に向けた取組み

 依然として跡を絶たない外国漁船の悪質な不法操業に対して、より一層、厳正な取締り姿勢で臨むとともに、洋上で外国漁船を監視する際、速やかな許可船情報の検索を可能にする外国漁船データべースの構築や新たな捕捉用資器材の開発・整備などを継続して実施します。
 また、水産庁等の関係機関との関係においては、連絡協議会等の開催により連携強化を図るとともに、地域の不法操業取締り要請に応えるべく情報提供の呼びかけによる情報収集体制の拡充を行うなど、我が国の貴重な漁業資源を守るため、努力を続けていきます。
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