尖閣諸島(沖縄県)は、沖縄群島西南西方の東シナ海に位置し、魚釣島、南小島、北小島、久場島、大正島の5つの島と3つの岩礁からなり、一番大きな魚釣島を起点とすると、石垣島まで約170km、沖縄本島まで約410km、台湾まで約170km、中国大陸まで約330kmの距離があります。
これまでの尖閣諸島についての歴史的変遷は、外務省の「尖閣諸島の領有権についての基本見解」で確認することができます。日本は我が国固有の領土であるとして問題としていませんが、昭和46年以降、中国、台湾が同諸島の領有権を公式に主張し始めました。中国、台湾が尖閣諸島の領有権を問題とするに至ったのは、昭和43年、日本、韓国及び台湾の海洋専門家が中心となり、ECAFE(国連アジア極東経済委員会)の協力を得て東シナ海海底の学術調査を行った結果、東シナ海の大陸棚には豊富な石油資源が埋蔵されている可能性があることが指摘されたためです。
さらに、平成8年7月に国連海洋法条約(海洋法に関する国際連合条約)が我が国について発効し、EEZ(排他的経済水域)が設定されたことに伴い、台湾・香港等で漁業活動への影響が生じたことに対する不満や、同諸島の北小島に日本の政治団体が灯台の用に供する構造物を設置したことを背景に、「保釣活動」と呼ばれる領有権主張活動が活発となり、尖閣諸島周辺の領海に侵入するなどの大規模な活動が行われるようになりました。近年では、中国において新たな活動団体が台頭し、急激に勢力を拡大し、同諸島の領有権主張活動を展開しています。
▲追跡中の巡視船艇 |
▲警告中の巡視艇 |
海上保安庁では、政府方針に基づき、平素から尖閣諸島周辺海域に巡視船を配備するとともに航空機によるしょう戒を行うなど警備に取り組んでいるところですが、警備体制をさらに磐石とするため、新たな巡視船艇の整備や警備手法の検討などを進めるとともに、関係省庁とも密接に連携しながら、情報の収集を図っています。
また、現在の魚釣島灯台は、昭和63年に日本の政治団体が設置したものですが、これを譲渡された漁業関係者から所有権放棄の意思が示されたため、民法の規定により、国庫帰属財産となりました。魚釣島灯台については、長年、付近海域での漁業活動や船舶の航行安全に限定的とはいえ寄与しており、さらに国が賃借している土地の上に設置されている事情もあることから、政府全体の判断として、その機能を引き続き維持することとなり、平成17年2月から、必要な知識、能力を有する海上保安庁が、航路標識法に基づく所管航路標識として「魚釣島灯台」の保守・管理を行っています。
▲領有権主張活動家船舶 |
▲魚釣島灯台 |
■尖閣諸島の位置図
尖閣諸島への抗議活動
平成18年10月27日
- 午前5時15分
巡視船が尖閣諸島魚釣島の西南西約85Km(領海の外側約63Km)の海上にて、22日に中国の活動家等が乗船し、香港を出港した活動家船舶「保釣二号」が時速約16Kmで、魚釣島向け航行しているのを確認。 - 午前7時51分
保釣二号は、中国国旗を掲げ、魚釣島の西南西方から接続水域(魚釣島西南西約44Km)に侵入し、依然同島に向かっていることから、巡視船により、領海に侵入しないよう警告を実施。
天候:曇、東北東の風11m、風浪2m、うねり北東2m、視程15Km - 午前9時21分
保釣二号は、魚釣島の西南西方から領海内(魚釣島西南西約22Km)に侵入。巡視船により領海から退去するよう警告等を実施。 - 午前10時05分
保釣二号は、魚釣島西南西約13Km(領海内)にて停船。 - 午前10時30分
保釣二号は、西向け(領海外向け)航行開始。 - 午前11時35分
保釣二号は、魚釣島から256度約22Kmにて領海から出域し、西南西向け航行継続中。 - 午前1時17分
保釣二号は、接続水域(魚釣島西南方約44Km)を出域。
尖閣諸島の領有権についての基本見解(外務省見解)
同諸島は爾来歴史的に一貫してわが国の領土たる南西諸島の一部を構成しており、1895年5月発効の下関条約第2条に基づきわが国が清国より割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には含まれていません。
従って、サン・フランシスコ平和条約においても、尖閣諸島は、同条約第2条に基づきわが国が放棄した領土のうちには含まれず、第3条に基づき南西諸島の一部としてアメリカ合衆国の施政下に置かれ、1971年6月17日署名の琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(沖縄返還協定)によりわが国に施政権が返還された地域の中に含まれています。以上の事実は、わが国の領土としての尖閣諸島の地位を何よりも明瞭に示すものです。
なお、中国が尖閣諸島を台湾の一部と考えていなかったことは、サン・フランシスコ平和条約第3条に基づき米国の施政下に置かれた地域に同諸島が含まれている事実に対し従来何等異議を唱えなかったことからも明らかであり、中華人民共和国政府の場合も台湾当局の場合も1970年後半東シナ海大陸棚の石油開発の動きが表面化するに及びはじめて尖閣諸島の領有権を問題とするに至ったものです。
また、従来中華人民共和国政府及び台湾当局がいわゆる歴史的、地理的ないし地質的根拠等として挙げている諸点はいずれも尖閣諸島に対する中国の領有権の主張を裏付けるに足る国際法上有効な論拠とはいえません。
外務省HPより
尖閣諸島は、1885年以降政府が沖縄県当局を通ずる等の方法により再三にわたり現地調査を行ない、単にこれが無人島であるのみならず、清国の支配が及んでいる痕跡がないことを慎重確認の上、1895年1月14日に現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行なって正式にわが国の領土に編入することとしたものです。同諸島は爾来歴史的に一貫してわが国の領土たる南西諸島の一部を構成しており、1895年5月発効の下関条約第2条に基づきわが国が清国より割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には含まれていません。
従って、サン・フランシスコ平和条約においても、尖閣諸島は、同条約第2条に基づきわが国が放棄した領土のうちには含まれず、第3条に基づき南西諸島の一部としてアメリカ合衆国の施政下に置かれ、1971年6月17日署名の琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(沖縄返還協定)によりわが国に施政権が返還された地域の中に含まれています。以上の事実は、わが国の領土としての尖閣諸島の地位を何よりも明瞭に示すものです。
なお、中国が尖閣諸島を台湾の一部と考えていなかったことは、サン・フランシスコ平和条約第3条に基づき米国の施政下に置かれた地域に同諸島が含まれている事実に対し従来何等異議を唱えなかったことからも明らかであり、中華人民共和国政府の場合も台湾当局の場合も1970年後半東シナ海大陸棚の石油開発の動きが表面化するに及びはじめて尖閣諸島の領有権を問題とするに至ったものです。
また、従来中華人民共和国政府及び台湾当局がいわゆる歴史的、地理的ないし地質的根拠等として挙げている諸点はいずれも尖閣諸島に対する中国の領有権の主張を裏付けるに足る国際法上有効な論拠とはいえません。
(2)北方四島
▲ロシア籍船入港時における立入検査 |
この北方四島を不法占拠しているロシアは、不当にもこれらの島々の沿岸12海里を自国の領海と主張しています。しかし、北方四島周辺海域は、水産資源の豊かなことで世界的にも有名な海域であり、しかも、根室の東端、納沙布岬から歯舞諸島の中の一つである貝殻島までの距離は3.7km、色丹島までが73km、国後島までが37km、一番遠い択捉島でも144kmしか離れておらず、小型漁船が容易に出漁できる距離にあります。ソ連時代から現在に至るまで、ソ連・ロシアが主張する領海において無許可で操業したなどとしてだ捕される日本漁船が後を絶たず、トピックスでも紹介しました平成18年8月の日本漁船が発砲を受けだ捕される事案では、昭和31年以来となる死亡者が発生しています。
この事案を受け、海上保安庁はロシア連邦保安庁国境警備局との間で累次にわたる協議を重ねた結果、平成18年12月、同種事案の再発防止を図るため、両機関間の情報交換をはじめとする連携・協力関係の強化について合意しました。
海上保安庁では、だ捕などの発生が予想される根室海峡周辺海域に常時巡視船艇を配備し、出漁漁船に対し直接または、漁業協同組合などを通じて被だ捕の防止指導及び漁業関係法令の遵守指導を行っていきます。
▲国後島沖 |
▲貝殻島沖 |
■北方四島の位置図
■日本漁船の被だ捕発生状況の推移
かにかご漁船「第三十一吉進丸」被だ捕事件の概要
-
▲だ捕された第三十一吉進丸
(写真中央白色の船体) - 8月19日、外務省の要請を受け、巡視船「さろま」が国後島古釜布(ふるかまっぷ)において甲板員1名の遺体を引き取り根室に搬送。
- 8月30日、根室海峡において、北海道所属漁業取締船「北王丸」により甲板員2名の引き取りを実施。
- 9月21日、第三十一吉進丸船長にロシアの裁判で罰金及び船体没収の判決。
- 10月3日、北方四島交流の船舶「ロサルゴサ」により第三十一吉進丸船長が根室に帰還。
- 船長等に対する取調べなど所要の捜査を行った結果、船長及び乗組員2名が北海道海面漁業調整規則に違反して、かにを不法に採捕していたことを特定、平成19年3月2日、釧路地方検察庁に書類送致。
(3)竹島
▲竹島 |
▲東島(女島、左)、西島(男島、右) |
我が国は、明治38年1月の閣議決定により竹島を領有する意思を再確認し、それに続く島根県告示により竹島を島根県へ編入しました。
戦後の占領下、連合国軍総司令部の覚書により、竹島には我が国の行政権が行使し得ず、また、我が国漁船の操業区域を規定した「マッカーサーライン」の外側にあったことから、漁船も付近海域で操業することができませんでした。
韓国は、サンフランシスコ平和条約の締結に伴う、マッカーサーラインの撤廃前に、自国水産業の保護と称して昭和27年に「機動救難士」を発し、竹島を取り込んだ「李承晩ライン」を設定し、日本漁船の締め出しを行いました。
政府は、直ちに韓国側へ抗議を行い、海上保安庁では、銃撃をも伴う韓国側の激しい取締りから我が国漁船を保護するため、巡視船を派遣し、漁船と韓国警備艇との間に割って入り煙幕を使用したり、巡視船が漁船を横抱きまたはえい航して脱出する、あるいは被だ捕寸前の漁船に接舷して、最悪でも乗組員だけは救出するなどの極めて危険かつ困難な作業により、懸命に被だ捕防止に努めました。
李承晩ラインは昭和40年に消滅しましたが、現在までに韓国にだ捕された我が国漁船は326隻、乗組員は3,904人、巡視船への銃撃等も15件16隻に及んでいます。
政府は、竹島は歴史的事実に照らしても、かつ、国際法上も明らかに我が国固有の領土であるという一貫した立場を堅持する一方、竹島問題は平和的に解決されるべきであり、外交ルートを通じて粘り強く解決を図る方針を示しています。
海上保安庁では、この政府方針に従い、竹島周辺海域に常時巡視船を配備して監視を続けるとともに、我が国漁業者の安全確保の見地から被だ捕の防止指導等を行っています。
なお、平成18年4月、韓国が強く反発した海上保安庁による竹島周辺海域の海洋調査などについては、「特集2. 海洋調査に迫る」で詳細に紹介しています。
■竹島の位置図