海上保安レポート 2007

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


特集 海洋国家「日本」と海上保安庁
〜海洋権益保全への取組み〜

はじめに

1.これが現場第一線

2.海洋調査に迫る


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


海上保安官を目指す


語句説明・索引


図表索引


資料編


特集 > 1.これが現場第一線 >コラム1 尖閣諸島 危険な領有権主張活動!
コラム1 尖閣諸島 危険な領有権主張活動!

第十一管区海上保安本部 石垣海上保安部
巡視船「ばんな」
 平成18年10月27日午前3時、石垣島を出港した巡視船「ばんな」は尖閣諸島沖に到着、魚釣島の島陰で他の巡視船とともに出動の指示があるまで待機する。巡視船「ばんな」は、石垣海上保安部に所属する全長約46メートル、180トン型の高速タイプの巡視船である。船内の士気は高いが、連日の配備により各乗組員とも疲労の色は隠せない。
 午前5時過ぎ、活動家船舶発見の知らせが入り、待機中の巡視船艇に対して一斉に指示が出され、「ばんな」も沖合24海里(約44km)の接続水域境界線まで進出。午前7時過ぎには、遠方に活動家船舶を肉眼で確認できるようになり、一瞬で乗組員総員の顔つきが変わった。活動家船舶は全長30メートル、200トン程度の漁船型の鋼船である。うねりは変わらず3メートルと高く、業務が難航することが予想された。
 午前7時45分、接続水域の外側で活動家船舶と会合。巡視船数隻により活動家船舶の周囲を取り囲み並走を開始する。巡視船も活動家船舶もうねりにより大きく前後左右に揺れ、大きな波しぶきを立てている。
 午前7時51分、活動家船舶が接続水域に入ったため、領海内に入らないよう警告を開始する。しかし活動家船舶は警告を無視して尖閣諸島を目指し航走を続ける。
 午前9時21分、活動家船舶が領海内に侵入。更なる警告を実施するも、活動家船舶はこれをも無視。
 午前9時40分、魚釣島まで10海里(約18km)に接近。躊躇している暇はない。警備本部の指令により巡視船数隻が一斉に活動家船舶を至近距離で取り囲み圧力をかける。うねりの状況と活動家船舶の揺れ方を確認しながら、活動家船舶との距離を5メートルに維持する。うねりの高い海上では、衝突を避けられるぎりぎりの距離である。一挙に緊張が高まる。
 しばらくすると、不意に「クシャッ」と何かが船体に当たる音がした。活動家がシュプレヒコールを起こしながら興奮して生タマゴを投げつけたのだ。「ばんな」では行為がエスカレートした場合の逮捕も念頭に、乗組員総員が装備等警備に万全な体制を確保し、冷静に警告、規制を続ける。過去には活動家数名が自ら海に飛び込み、うち1名が死亡する事案も発生しており、対応は予断を許さない。
 なおも至近距離での規制を継続したが、活動家船舶に航走を断念する兆しは見られない。このため、更に1000トン型の巡視船が包囲に加わり、この巡視船と高速タイプの巡視船が連携をとりながら、活動家船舶の前方に立ち塞がるように接近したところ、ようやく停止した。午前10時5分、魚釣島の手前7海里(約13km)であった。
 活動家船舶はその後しばらくして反転、台湾方面へ向け航走を開始した。乗組員全員が胸を撫で下ろしたものの、活動家船舶が再び反転する可能性もあることから、引き続き追尾監視を行い、午前11時35分、領海外出域を確認。他の巡視船に監視を引き継ぎ、その場で待機する。
 警備本部からの解除の指令により、活動家船舶が再入域するおそれが無くなったことを知る。長く厳しい警備業務が終わった。