海上保安レポート 2007

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


特集 海洋国家「日本」と海上保安庁
〜海洋権益保全への取組み〜

はじめに

1.これが現場第一線

2.海洋調査に迫る


海上保安庁の業務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


海上保安官を目指す


語句説明・索引


図表索引


資料編


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コラム5 不法操業の韓国漁船を捕捉せよ

第七管区海上保安本部 対馬海上保安部
巡視艇「やえぐも」船長 長谷川 良英
取締会議のために集結した対馬海上保安部の巡視艇
▲取締会議のために集結した
対馬海上保安部の巡視艇
 私の勤務する対馬海上保安部(長崎県)の周辺海域は、福岡までの距離約130km、韓国までの距離約50kmという国境の部署、国境最前線だ。豊富な魚種を狙い、速力80km/時を超える韓国潜水器密漁船などの外国漁船による不法操業が後を絶たない。対馬海上保安部は巡視艇6隻が配置され、日夜、対馬周辺海域のしょう戒業務等を行っている。私は、このうちの1隻、28年前に就役した巡視艇「やえぐも」に乗船しており、当時の性能はないものの、日頃の整備により何とか業務に対応している。
 平成18年7月2日、午後2時20分、対馬海上保安部オペレーションから、
「対馬西方の我が国排他的経済水域の境界線付近で韓国漁船の密漁情報あり。「やえぐも」は確認に当たれ。」
との緊急指令があり、直ちに出港した。
 通報海域向け急行中の午後3時53分、レーダー員から「船長、レーダーに船舶らしき映像を捕捉しました。」との報告を受け、船橋内に緊張が走った。逃走させまい。午後3時56分、双眼鏡により、船尾からロープ1本を曳いている、違反操業の韓国漁船が確認できた。更に接近し、旗りゅう信号「L旗」(国際信号旗:「停船せよ」という意味)の掲揚、汽笛の連続吹鳴、船外スピーカーにより韓国語による停船命令を発するも無視し続け、蛇行して逃走し始めた。
 乗組員に警告弾の投てきを命じる。「バーン、バーン、バーン」光、色、音を発する警告弾から煙が立ち上がった。しかし、船はまだ逃走を止めない。
 午後4時8分、私は強行接舷を決し、「目標、違反韓国漁船の船橋付近に舵を取れ。」と指示した。違反韓国漁船との距離が徐々に近づく。巡視艇やえぐも前部甲板に配置した制圧班から「漁船との距離、10m、5m、3m。」との無線報告が入る。制圧班のうち1名は、自分の胸を叩き気合を入れていた。「よし、今だ。船首を当てろ。」・・・・、「ガツーン」という音とともに、やえぐもと漁船が接触し、臆することなく制圧班4名が間髪入れずに順次飛び移り、勢いよく船橋内に突入した。制圧班から「船橋内完全制圧。1612(ヒトロクヒトフタ)、船長をEZ漁業法違反で現行犯逮捕。制圧班人員異常なし。」との報告があった。ついに悪質・巧妙化している韓国漁船を捕捉することができた。違反漁船に移乗した制圧班の無事が確認でき、船橋内では張り詰めていた空気が一転し安どに変わった。
 日々、危険と隣り合わせである仕事であるからこそ、強い信頼関係により結ばれた乗組員を大切に思いながら、今後とも一丸となっていい仕事をしていきたい。