海の安全を確保するために

海難の救助

1目標

 海上保安庁では、船舶海難及び船舶からの海中転落による死亡・行方不明者を、平成13年から平成17年までに年間200人以下に減少させる(平成13年、平成14年とも290人以下)という目標値を設定し、死亡・行方不明者数をできる限り減少させるよう努めています。
 200人の内訳としては、一般船舶及び漁船乗組員については160人以下、プレジャーボート等乗船者については40人以下としています。平成13年の目標としては、それぞれ「250人以下」「40人以下」を目標としました。

2目標の達成度

 平成13年における船舶海難及び船舶からの海中転落による死亡・行方不明者数は320人*1であり、昨年の331人から11人減少し、ある程度の成果を挙げましたが、平成13年の目標値290人を30人オーバーしました。
 内訳を船舶の用途別でみると、一般船舶及び漁船では目標値250人のところを266人と16人上回り、プレジャーボート等では目標値40人のところを54人と14人上回りました。
 これらは、ライフジャケットの着用率が目標である50%には及ばず依然として低い状況にあることがその要因と考えられます。
 しかしながら、プレジャーボート等では事故発生時におけるライフジャケットの着用率は52%であり、通常時よりも着用率は上がっています。
 このことからも、荒天時や実際に事故が起こったときには、積極的にライフジャケットを着用する人が増えていると考えられ、一定の施策の効果がうかがえます。
 海上保安庁では、引き続き船舶の乗組員等の安全意識・自己責任意識の向上を図ること等により、平成17年までには、目標の達成を目指します。

海上での遭難者の救助状況(平成13年)


*1320人の内訳
  • 船舶海難による死亡・行方不明者数・・・・ 152人
  • 船舶からの海中転落による死亡・行方不明者数・・・・149人
  • 病気等によって操船者が操船不可能となったことにより、船舶が漂流するなどの海難が発生した場合に、この病気等により死亡した人数(平成12年までは船舶海難による死亡・行方不明者数として計上)・・・・19人


3目標に向けた取組み

 海上保安庁では、海難等による遭難者を一人でも多く救助するために、海難等の発生から救助に至る3つの過程(Stage)において、次に述べる様々なサービスを提供するとともに、サービスの更なる向上を目指し、目標の達成に向け取り組んでいます。

救助までのフロー図

(1) 1st Stage
 海難等が発生した場合、遭難者を迅速に救助するために最も重要なことは、発生した事故について、いかに早く情報を入手することができるかということです。事故の認知が早ければ救助までの時間が短縮され、救助率の向上につながるからです。
 そこで海上保安庁では、情報を素早く入手するために、GMDSS*1に対応した遭難警報を24時間体制で聴守するとともに、緊急通報用電話番号「118番」を導入しています。
 平成12年5月の118番導入の前後で、事故発生から30分以内に海上保安庁が情報を入手した認知率が41%から45%に向上し、救助率もアップしています。今後さらに多くの方々に118番を理解し有効活用してもらうために、継続して周知キャンペーンを推進することとしています。

(2) 2nd Stage
 海難等の発生を認知した後に、次に重要なことは、現場に救助勢力をどれだけ早く投入できるかということです。
 海上保安庁は、海難等の発生に備え、24時間の当直を行うなど即応体制に万全を期しています。また、海難等の発生海域付近を航行している一般船舶に救助要請をする船位通報制度(JASREP:Japanese Ship Reporting System)の運用のほか、民間救助組織の効率的な活用等によるレスキューネットワークの構築にも努めています。

海難の救助

ライフジャケット着用状況
ライフジャケット着用状況
(注)平成13年ゴールデンウィーク期間及び夏期に海上保安庁へのヘリコプターにより全国で目視調査した集計結果
(注)「遊漁船」については、「モーターボート(船室あり)」又は「モーターボート(船室なし)」のいずれかに集計
(注)「その他」とは、ゴムボート、シーカヤック等をいう。

 また、海潮流等によりその位置が刻々と変化する海上の漂流者に対して、救助勢力を最短時間で到着させるために、高精度な漂流予測システムを活用するとともに、遭難船舶を遠距離からでも探知することができる高性能レーダーや夜間でも遭難者の体温を感知して発見することができる赤外線捜索監視システム等の導入を行っています。
 さらに、海中に転落した遭難者が生還するための方策として、浮いて救助を待つことができるライフジャケットの着用が非常に有効である(ライフジャケットの効果については「命を守るライフジャケット」ポスターを参照)ことから、ライフジャケットの着用率を50%以上に向上させるべく、キャンペーンの実施や関係団体の指導等により、その着用を強力に推進していくとともに、ライフジャケット着用状況の調査を継続して行っていくこととしています。

(3) 3rd Stage
 救助勢力が現場に到着した後は、遭難者を迅速に、しかも安全に救助するための救助能力が最後の課題です。
 海上保安庁では、高度でかつ特殊な救助能力を有する特殊救難隊員や潜水士等を養成するとともに、生命に危険のある傷病者に対しては救急救命処置が重要であることから、これを実施することができる救急救命士の養成を継続していきます。
 また、船舶海難及び船舶からの海中転落事故の95%が沿岸20海里以内の海域で発生していることから、海上保安庁では沿岸海難等の対応が重要であると考えています。このため、平成14年10月には、福岡航空基地に高度な救助能力と救急救命能力を併せ持つ機動救難士を配置して、ヘリコプターと連携した沿岸救助即応体制を強化します。このほか、遭難者の陸上への迅速な搬送や必要に応じた医師の救急往診のため、巡視船艇・航空機による輸送体制の更なる充実を目指します。

救命活動の様子
救命活動の様子

【機動救難士の業務概要】

 以上述べてきた3つのStageにおける各々の方策を実施することで、更なる死亡・行方不明者の減少が可能であると確信しています。

*1GMDSS (Global Maritime Distressand Safety System)海上における遭難及び安全に関する全世界的な制度
船舶が世界中のどこを航行していても遭難・安全通信をより迅速・確実に行うことができる通信システムであり、平成11年より全面的に運用開始された。




4生還に向けて

 不幸にして海中に転落した場合に生還するためには、次の3つの方法(Step)が非常に有効です。

(1) 1st Step
 まず、海に浮いていることです。浮かんでいれば救助の手が差し延べられます。ライフジャケットを着用し、救助を待ちましょう。
(2) 2nd Step
 次に、連絡手段を持つことです。耐水タイプの携帯電話、防水パックに入れた無線機等を携行しましょう。
(3) 3rd Step
 最後に、救助要請をすることです。緊急通報用電話番号「118番」は大変有効です。救助要請を受けた海上保安庁及びその他の救助機関が連携し、直ちに救助に向かいます。

 以上の3つのStepで生還率が大幅にアップします。海上保安庁では、これら3つのStep(ライフジャケットの常時着用、携帯電話等の連絡手段の確保、緊急通報用電話番号「118番」の有効活用)を基本とする自己救命策確保キャンペーンを推進しています。皆様自身の命を守るために、ご理解とご協力をよろしくお願いします。

命を守るライフジャケット

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