海上保安レポート 2015

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

1 治安の確保 > CHAPTER IV 密輸・密航対策
1 治安の確保
CHAPTER IV 密輸・密航対策

最近の密輸事犯については、船員を利用した薬物の密輸入事犯が引き続き発生しているほか、コンテナ貨物を利用した薬物の大量密輸事犯も発生しており、これら事件の背後には、国際犯罪組織が関与しているものもあると考えられます。また、外国人による密航事犯については、引き続き船員が手引きする事犯が発生しており、これらの対策は重要な課題となっています。

海上保安庁では、こうした我が国の法秩序を乱す密輸・密航事犯を厳格に取締り、薬物や銃器、密航者の水際阻止に努めています。

平成26年の現況
■密輸事犯について

平成26年の薬物事犯の摘発件数は、平成25年と同じ7件でしたが、覚醒剤の押収量は約195kgと過去5年間で最高でした。また、平成25年の銃器事犯の摘発はありませんでしたが、平成26年は1件摘発しています。

海上からの不正薬物の密輸事犯については、福岡、横浜の2箇所に陸揚げされたメキシコ来コンテナ貨物に隠匿し、大量の覚醒剤を密輸入する事件等を関係機関と合同で摘発しており、傾向として密輸手口の大口・巧妙化及び密輸ルートの多様化が見受けられ、国際犯罪組織が関与しているものもあると考えられます。


最近の主な薬物・銃器事犯摘発状況
最近の主な薬物・銃器事犯摘発状況

薬物事犯の摘発状況
薬物事犯の摘発状況
銃器事犯の摘発状況
銃器事犯の摘発状況
   
覚醒剤密輸入に関与した船舶
覚醒剤密輸入に関与した船舶
押収した覚醒剤等
押収した覚醒剤等
関係機関と合同でメキシコ来コンテナ貨物による大量覚醒剤密輸事件を摘発!
押収した覚醒剤の一部
押収した覚醒剤の一部

平成26年1月中旬、福岡、横浜の2箇所に陸揚げされたメキシコ来コンテナ貨物(大理石)の内部に覚醒剤が隠匿されていることが発覚したことから、それぞれ別事件として関係機関と合同で捜査を進めていたところ、同一の被疑者による覚醒剤密輸事件であることが判明、福岡の事件については、覚醒剤約145kg(末端価格約101億円)、横浜の事件については、覚醒剤約25kg(末端価格約17億円)を押収するとともに、関係者5名を覚せい剤取締法違反(営利目的密輸等)で通常逮捕しました。

■密航事犯について

平成26年の密航事犯の摘発件数は、平成25年より4件減少し2件でした。摘発は、いずれも不法入国事犯であり、摘発人数は、不法入国者3名、不法入国手引者2名でした。

船舶による不法出入国事犯は、昨年に続き、船員が成功報酬を目的に、密航斡旋ブローカーから依頼を受けて手引きした数人規模の密航事件を摘発しており、依然として日本での就労を目的とした密航事犯が発生しているほか、退去強制歴を有する船員が偽変造船員手帳等を利用して他人になりすました事件を摘発しており、小口化・巧妙化の傾向が続いています。

密航事犯の背後には、海外犯罪組織の関与はもとより、日本国内に密航を斡旋する手引者が存在することが多くあり、海上保安庁では、密航者を検挙した後も関係機関と連携して捜査を継続し、事件の全容解明に努めています。


船舶利用の不法出入国事件摘発状況
船舶利用の不法出入国事件摘発状況
船舶利用の不法出入国者国籍別摘発状況
船舶利用の不法出入国者国籍別摘発状況
関係機関と連携して中国人集団密航事件を摘発!
煙突部に潜んでいる中国人甲板長
煙突部に潜んでいる中国人甲板長

平成26年9月25日、名古屋海上保安部は、愛知県警察から、製鐵所の構内で、中国人密航者と思われる男性2名を確保した旨の通報を受け、同所構内の岸壁に着岸中であったパナマ籍貨物船を立入検査したところ、船内に密航者が潜伏していたと思われる痕跡を認めるとともに、煙突部に潜んでいた同船の中国人甲板長が、中国人密航者を船内に匿って上陸させたことを認めたことから、翌26日に出入国管理及び難民認定法違反(営利目的集団密航助長)で通常逮捕するとともに、警察と連携したその後の捜査において、密航者を手引きしようとしたとして、中国人男性1名を警察が同法違反(集団密航者収受未遂)で通常逮捕しました。

今後の取組み

海上保安庁では、引き続き、国際組織犯罪対策基地を中心に国内外の関係機関との協力を強化しつつ、海事・漁業関係者や地元住民からの情報収集を行うとともに、その分析活動に努め、密輸・密航が行われる可能性が高い海域では、巡視船艇・航空機による重点的な監視・警戒を実施し、密輸・密航の蓋然性が高い地域から来航する船舶に対しても、重点的な監視や立入検査を実施することで、密輸・密航事犯の水際阻止に努めていきます。