海上保安レポート 2015

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍 > III 海難・海上災害への対応 > 1 遠方海難等への対応
特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍
III 海難・海上災害への対応
III 海難・海上災害への対応

領海警備や外国漁船の取締りだけではなく、海難救助や海上災害への対応も海上保安庁にとって重要な基幹業務です。これらの事案の多くは沿岸部において発生していますが、広大な海域を有する我が国では、遥か遠方の海域で海難等の事案が発生することも少なくありません。また、遠方海域を航行する船において、急患が発生することもあります。海上保安庁では、そのような事案に加え、外国で発生した事案に対しても全力を挙げて対応しています。

ここでは、遠方海域等において海上保安庁が対応した最近の海難等の事例について紹介します。

1 遠方海難等への対応
1 大王崎沖漁船浸水海難対応

平成27年2月1日午前11時55分頃、海上保安庁運用司令センターにおいて、日本漁船の遭難信号を入手しました。また、午後零時15分頃には、三重県漁業無線局から鳥羽海上保安部浜島分室に、「三重県大王崎の南260海里(約480km)において漁船が浸水中。救助願う。」旨の連絡がありました。

このため、海上保安庁では、関連情報の収集を行うとともに、直ちに巡視船及び航空機を現場向け急行させました。

同日午後2時10分頃、海上保安庁の航空機が同漁船を確認、午後2時40分頃には巡視船が同漁船と会合し、午後4時10分頃までに2艇の救命筏に分乗していた乗組員28名(日本人8名、キリバス人20名)全員を無事救助しました。


大王崎沖海難発生位置概略図
大王崎沖海難発生位置概略図

2 潮岬沖急患搬送

平成26年7月4日午前3時頃、潮岬の南東約170km付近を航行中の客船から、第四管区海上保安本部運用司令センターに対し、「乗客がベッドから転落し、意識はあるが、右手が麻痺して呂律も回らない。病院への搬送を要請する。」旨の通報がありました。

海上保安庁では、巡視船及び航空機を発動して対応していたところ、午前8時頃、同客船から「船内で別の急病人が発生した。」との連絡があり、先に通報のあった急患とあわせて対応することとなりました。

同日午前10時30分頃、海上保安庁のヘリコプターによる両名の吊上げ救助を完了し、午後零時頃、中部国際空港において待機していた救急車に引き継ぎました。


潮岬沖海難発生位置概略図
潮岬沖海難発生位置概略図

3 硫黄島沖洋上救急

平成26年8月23日午後1時22分頃、急患発生船舶の所属会社から第五管区海上保安本部運用司令センターに対し、「硫黄島東南東約1,200kmを航行中の当社所属漁船の船長が、頭痛があり、手足のしびれはないが呂律が回らないことから救助を要請する。」旨の118番通報がありました。

このため、海上保安庁では、洋上救急のため海上自衛隊に災害派遣要請を行うとともに、特殊救難隊を同乗させた航空機を出動させました。

翌日午前5時50分頃、硫黄島の東約1,000km付近において、医師等を乗せた海上自衛隊の飛行艇が患者を収容し、海上自衛隊硫黄島飛行場まで搬送、硫黄島飛行場において、海上保安庁の航空機が患者と医師等を引き継ぎました。その後、海上保安庁の航空機が、患者等を海上自衛隊厚木飛行場まで搬送し、午前10時55分頃、待機していたドクターカーに引き継ぎました。(洋上救急については、「2 生命を救う」で詳しく説明していますので、ご覧ください。)


硫黄島沖海難発生位置概略図
硫黄島沖海難発生位置概略図