海上保安レポート 2015

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍 > V 海洋権益の確保に向けて > 1 大陸棚延長に向けた取組み
特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍
V 海洋権益の確保に向けて
海洋調査の準備作業
海洋調査の準備作業

「海洋」は今、開拓の余地を残したフロンティアとしてあらためて注目されています。海洋基本法(平成19年法律第33号)において、「四方を海に囲まれた我が国にとって、海洋の開発・利用は我が国の経済社会の基盤であるとともに、海洋の生物の多様性が確保されること等の海洋環境の保全は、人類の存続の基盤である」とされているとおり、「海洋」を開発・利用していくことは、四面環海の我が国にとって極めて重要です。

一方、「海洋」を開発・利用していくためには、安全・安心な海であることが前提となります。このため、海上保安庁では、海洋権益の確保、海上の安全確保、海洋環境の保全、防災等の様々な目的に活用されるよう、海底地形調査や海域火山の監視観測等の海洋調査を実施し、様々な海洋情報を収集しています。

ここでは、海洋権益の確保に向けて海上保安庁が行っている最近の取組みと成果について紹介します。

1 大陸棚延長に向けた取組み
1 国連海洋法条約

我が国は、「海の憲法」と呼ばれる国連海洋法条約を平成8年に批准しました。国連海洋法条約では、沿岸国が海底と海底下を探査し、天然資源を開発する主権的な権利を有する大陸棚という区域を定めています。大陸棚の範囲は、原則として領海の基線から200海里(約370km)とされていますが、それに加え、海底の地形や地質がある条件を満たす場合はさらに延長することができるとされており、そのためには、海底の地形や地質に関する科学的な調査データに基づき国連に申請を行い、審査を受けることになります。このため、我が国周辺に200海里を超える大陸棚として認められるための条件を満たす海域がどれだけあるのか、詳細な海洋調査で確認することが必要となりました。


2 大陸棚延長に向けた我が国の取組み

平成13年、世界で初めてロシアが大陸棚延長を申請しましたが、大陸棚限界委員会からデータ不足が指摘されるなど、厳しい審査基準が明らかになりました。

このような状況から、我が国では、平成15年12月、内閣官房に大陸棚調査対策室を設置し、平成16年8月には内閣官房副長官を議長とする「大陸棚調査・海洋資源等に関する関係省庁連絡会議」を設置するなど、大陸棚の延長に向け、政府一体となって取り組んでいくこととなり、調査については関係省庁が分担して実施することとなりました。

海上保安庁では、昭和58年から単独で大陸棚調査を進めていましたが、平成16年からは大型測量船2隻を専従させたほか、民間の調査能力も活用して調査を進め、平成20年6月までに25年間をかけて調査を行いました。この間、海上保安庁の測量船が航行した距離は実に108万km(地球27周分)に達しています。


大陸棚調査に関する年表
大陸棚調査に関する年表

これら調査結果に基づき、平成20年11月、日本の国土面積の約2倍にあたる約74万km2にわたる大陸棚延長を大陸棚限界委員会に申請しました。大陸棚限界委員会の審査は平成21年9月に開始され、海上保安庁も関係省庁と連携し、審査への対応を行いました。


大陸棚の審査の流れ
大陸棚の審査の流れ

3 大陸棚の延長の実現

平成24年4月、大陸棚限界委員会から勧告が発出され、我が国が延長を申請していた海域のうち、我が国の国土面積の約8割にあたる大陸棚の延長が認められました。

これを受け、我が国では、大陸棚の延長が認められた海域のうち、四国海盆海域及び沖大東海嶺南方海域の範囲を定める「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律第二条第二号の海域を定める政令」(平成26年政令第302号)が平成26年10月1日に施行され、我が国初の延長大陸棚が設定されました。このことは、海上保安庁が25年の長きにわたり実施してきた大陸棚調査の成果が実り、我が国の海洋権益の確保に大きく貢献したものであるといえます。

また、大陸棚の延長が認められた海域のうち、関係国との調整が必要となる小笠原海台海域及び南硫黄島海域については、当該調整の終了後、政令の制定に速やかに着手するとともに、審査が先送りされた九州・パラオ海嶺南部海域については、大陸棚限界委員会により早期に勧告が行われるよう努力を継続することとしています。


延長大陸棚等の範囲
延長大陸棚等の範囲