海上保安レポート 2008

●はじめに


特集1 海上保安庁 激動の10年

特集2 海洋基本法を見据えた海上保安庁の取組み〜新たな海洋立国の実現に向けて〜

1.体制を充実させて

2.海洋調査により海を拓く

2.大規模海難ゼロに向けて

特集3 海上保安庁のあゆみ


海上保安庁の任務・体制


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海を繋ぐ


目指すは海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編


本編 > 治安の確保 > 5. 海賊対策
治安の確保
5. 海賊対策
目標 Target
 東南アジア海域、とくに多くの日本関係船舶が通航するマラッカ・シンガポール海峡における 海賊・海上武装強盗(以下、海賊」という。)問題は、安全な航行を確保する上で極めて重要です。
 海上保安庁では、東南アジア海域沿岸国の海上取締機関の能力向上支援、同機関との連携・協力関係の強化、海賊関連情報の収集分析・提供体制の強化等の施策を推進し、東南アジア海域における海賊事案の未然防止、事案発生時における即応体制の確保を目指しています。
平成19年の現況
国際商業会議所国際海事局(IMB)に報告された平成19年の全世界における海賊の発生件数は、ソマリア沖等アフリカの一部海域での増加に伴い、平成18年より24件増加し263件となっています。一方、東南アジア海域においては、8件減少し80件、特にマラッカ・シンガポール海峡においては、6件減少し10件となっています。
 また、日本関係船舶の海賊被害件数は2件増加し10件となっています。東南アジア海域における海賊の発生件数は、平成15年以来減少傾向にありますが、これは東南アジア海域の沿岸国による海賊対策の強化や、我が国を中心とした国際的な連携協力関係の推進等が要因であると考えられます。
 しかしながら、ソマリア沖のように一旦減少傾向にあった海域で件数が増加に転ずるなどの例もあることから、引き続き注意が必要です。
 海上保安庁では平成12年から巡視船・航空機を東南アジア各国へ派遣し、それらの国々の海上取締機関との海賊対策連携訓練や乗船研修等の実施を通じ、同機関の取締能力の向上や連携・協力関係の強化に努めてきました。平成19年2月には、初めての試みとしてマレーシア及びタイの海上取締機関との間で多国間の海賊対策連携訓練を実施しています。
 また、東南アジア各国海上取締機関職員を我が国に招へいした研修やセミナーを開催し、海賊対策をはじめとする海上犯罪の取締りに必要な知識・技術の移転を行っています。
 一方、海上保安庁はシンガポールに設置された情報共有センター(ISC)との連絡窓口として、具体的な事件情報に関する円滑な情報共有に努めています。また、同センター発足時から当庁職員を派遣しているほか、当庁海賊対策室と同センターとの間で情報伝達訓練を実施するなど、同センターとの連携強化に努めています。
 さらに、海上保安庁では情報共有センター(ISC)や東南アジア各国の海上取締機関との間で、海賊関連情報の収集活動の強化にも取組んでおり、収集した情報については、海上保安庁ホームページにおいて広く一般に提供しています。
■海賊の発生件数
海賊の発生件数
今後の取組み
 平成19年10月、シンガポールで開催された「第3回アジア海上保安機関長官級会合」において、海上保安機関の人材育成支援に言及した共同宣言が採択されました。海上保安庁ではこの共同宣言も踏まえ、今後とも東南アジア各国の海上取締機関の人材育成支援や連携訓練等を通じた連携・協力関係の強化により、東南アジア各国の海上取締能力の向上を図るとともに、関係機関から収集した情報の分析・提供体制を強化し、海賊対策の一層の推進に努めていきます。
■地域別海賊発生状況(平成19年)
地域別海賊発生状況(平成19年)