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4. 密輸・密航対策
(1)密輸事犯について
平成19年の薬物・銃器事犯の摘発件数は過去十年間で最多となる31件であり、平成18年より9件増加しています。
この結果は、外国船舶に対する立入検査・監視取締りに必要な要員の確保、国内外関係機関との緊密な連携・協力に加え、昨年、国内において相次いで発生したけん銃発砲事件を踏まえた銃器対策の徹底等各種施策を強力に推進してきた効果が現れたものと考えられます。
薬物・銃器事犯の犯行形態として主なものは、船員が薬物・銃器を居室等の船内又は着衣及び所持品の中に隠匿していたものでした。
また、総摘発件数の6割以上がロシア人船員による自己使用目的の大麻所持事犯、遊戯目的の空気銃及び準空気銃の不法所持事犯となっていますが、中には船員が上陸した際に大麻を所持していた事案もあることから、引き続き船員の関与する犯行には十分な警戒が必要です。
このほか、薬物・銃器以外の密輸事件として、暴力団幹部らがロシアから貨物船を使用して熊の胆を密輸入した事犯、暴力団幹部らが日本漁船を使用して台湾向けにうなぎ稚魚を不正に輸出しようとした事犯、北朝鮮産のあさりを中国産と偽り不正に輸入した事犯、中国人船員が中国から貨物船を使用して偽造クレジットカード原料を密輸入した事犯を警察及び税関等と連携し、摘発しています。薬物・銃器に限らず密輸事犯が組織的に行われ多様化している状況が認められます。
(2)密航事犯について
平成19年の船舶利用による不法入国事件の摘発件数は4件、不法入国者16名、助長者等5名であり、平成18年と比較して摘発件数は6件、不法入国者は10名、助長者等は17名、それぞれ減少し、不法出国事件の摘発はありませんでした。近年の不法入国事犯については、過去多発したコンテナ内への潜伏や隠し部屋等に大量の密航者を隠匿する形態のものが見られなくなり、少人数による貨物船への潜伏密航等小口化で推移しています。
この理由としては、国内外の関係機関との連携や取締りの強化、国際航海船舶及び
国際港湾施設でのテロ防止対策の強化等により、水際における監視体制が強化され、密航阻止の効果が上がっているものと考えられます。
しかしながら、平成19年4月に高速小型船を使用して密入国した韓国人11名及び助長者3名を摘発しました。この捜査において、過去に日本国内において退去強制処分等を受け、正規の手続きでは日本へ入国できない韓国人が、日韓両国の斡旋ブローカーの関与により
仕立船を利用し、九州北部を舞台として日韓間の不法出入国を繰返している実態が明らかとなっています。
また、平成19年11月20日から、海空港での入国審査において我が国に入国しようとする外国人について指紋及び顔写真の提供が義務化されました。これにより、過去、日本国内から退去強制処分を受けた者等については、入国審査を通過することが不可能となり、今後、船舶を利用しての不法入国事犯が増加することが懸念されるため、引き続き密航に対する厳重な警戒が必要です。
海上保安庁では、
- 薬物・銃器等の洋上取引や密航者の受渡しが行われる可能性のある海域における巡視船艇・航空機による監視・警戒の実施、
- 薬物・銃器等の流出や密航者の乗船の可能性が高い地域から来航する船舶等に対する厳重な監視及び立入検査の実施、
- 海事・漁業関係者をはじめ国民に対する広報啓発活動の推進、
- 国内関係機関との連携強化による情報交換、合同捜査等の的確な実施、
- 密輸・密航事犯等に対する専従捜査組織である国際組織犯罪対策基地職員を中心とした海外関係機関との情報交換、連携・協力の強化、
- 管区本部に組織犯罪情報分析官を配置することによる情報分析体制の強化
などを通じ、犯罪の予防、効果的な取締りを実施していきます。