海上保安庁では、転覆や沈没海難における人命の救助などに迅速に対応するため、昭和45年6月から潜水業務の本格的な運用を開始し、令和2年6月に50周年の節目を迎えました。
「潜水業務運用開始」から今日までの長い歴史の中で、「特殊救難隊」や「機動救難士」といったスペシャリスト集団が生まれましたが、全ての原点は「潜水士」です。
映画「海猿」でも描かれましたが、「潜水士」は全国の海上保安官の中から選抜され、広島県呉市にある海上保安大学校で厳しい潜水研修を修了した職員のみが就くことができる潜水業務のプロフェッショナルであり、全国に22隻ある潜水指定船で日夜、業務にあたっています。
平成21年10月には、東京都八丈島北北東沖の海上において4日間転覆状態で漂流した後に発見された漁船「第一幸福丸」の船内から横浜海上保安部所属巡視船「いず」潜水士が生存していた乗組員3名を救助するなど、これまでに数多くの海難現場において救助活動に従事してきました。
平成23年3月11日に発生した東日本大震災に係る対応においては、現在も行方不明者の捜索を継続しており、令和2年までに、延べ7,005人の潜水士が対応にあたり、1,245回の潜水捜索等を実施しています。また、潜水士は近年激甚化する自然災害の現場でも活動しており、令和2年においては、7月の豪雨災害において長崎県対馬市鶏知川で行方不明者の潜水捜索を実施するなど、海上のみならず陸上災害の現場においても活躍しています。
引き続き1人でも多くの命を救うべく、潜水業務体制の維持・向上に努めていきます。
潜水業務運用開始当時の写真
令和2年7月長崎県対馬市鶏知川行方不明者捜索における対応写真
平成21年10月「第一幸福丸」救助活動