海上保安レポート 2015

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

2 生命を救う > CHAPTER II 沿岸域活動における安全推進
2 生命を救う
CHAPTER II 沿岸域活動における安全推進

海難の9割以上は、沿岸から約20海里(約37km)未満の海域で発生しています。このため、主に沿岸域で活動する小型漁船やプレジャーボート等の船舶事故対策や、マリンレジャー中の海浜事故対策等、沿岸域における安全推進が重要な課題となっています。

海上保安庁では、沿岸域での海難を防止し、死者・行方不明者数を減少させるため、関係機関とも連携・協力しつつ、自己救命策の周知・啓発等に取り組んでいます。

平成26年の現況

平成26年の船舶からの海中転落のうち、死者・行方不明者は194人で、その内訳は、漁船からが121人で最も多く、次いで一般船舶が45人でした。このうちライフジャケット着用者は59人で死亡率は16%、非着用者は135人で死亡率は47%と2.9倍になっています。同様にマリンレジャーに関する海浜事故における死者・行方不明者数255人を活動内容別に見ると、釣り中が遊泳中とならび99人で最も多くなっており、釣り中の死者・行方不明者が全体の39%を占めています。過去5年間の釣り中の海中転落者のうち、ライフジャケット非着用者の死亡率は49%で、着用者の死亡率32%に比べ1.5倍になっています。

船舶の種類や活動の内容に関らず、海中に転落した場合、ライフジャケットの着用により、体力の消耗が抑えられ、ライフジャケットの非着用時に比べて生存の可能性が高まることから、ライフジャケットの着用の有無が海中転落時の生死を分ける大きな要因の一つとなります。また、早期の通報も迅速な救助活動につながります。


海中転落者のライフジャケット着用率の推移
海中転落者のライフジャケット着用率の推移
釣り中の海中転落者のライフジャケット
着用・非着用による死亡率の違い(過去5年間)
釣り中の海中転落者のライフジャケット 着用・非着用による死亡率の違い(過去5年間)

今後の取組み
1 自己救命策確保キャンペーンの推進

海での痛ましい事故を起こさないためには、

  1. ライフジャケットの常時着用

  2. 防水パック入り携帯電話等の連絡手段の確保

  3. 海のもしもは「118番

の「自己救命策確保3つの基本」が重要です。

海上保安庁では、引き続き、メディア等あらゆる手段を通じて、「自己救命策確保3つの基本」の周知・啓発活動を実施し、「自己救命策確保キャンペーン」を展開していきます。

特に、漁船からの海中転落者は、ライフジャケット着用率が低く、過去5年間でみるとライフジャケット非着用者の死亡率は着用者の約2倍となっていることからも、海難防止講習会等を通じて、漁業者のライフジャケット着用率の向上を図っていきます。また、主に漁業者の家族によりライフジャケットの着用を呼びかける「LGL(ライフガードレディース)」による活動も行われています。海上保安庁では、この活動への支援等を通じて、ライフジャケット着用の周知・啓発に努めていきます。

マリンレジャー中の事故防止については、若年齢層に対する海上安全教室の開催や各種イベントでの海上保安庁ブースの設置等により周知・啓発活動を行い、マリンレジャーを安全に楽しめるよう努めます。

また、各海上保安部署にマリンレジャー行事相談室を設置し、国民の皆様からのお問い合わせやご相談に対応していきます。


2 プレジャーボート等に対する安全指導

海上保安庁では、プレジャーボートの運航者に対して安全航行に関する周知・啓発を行う海上安全指導員の活動支援のほか、海上安全講習会や安全パトロール活動等、地域に密着した安全活動を展開している小型船安全協会等との連携を進めていきます。

これら民間関係組織等との連携を生かしながら、事故の未然防止のため、積極的に安全指導を実施し、海事関係法令の遵守の徹底を図るとともに、小型船舶操縦者の遵守事項である

  • 危険操縦及び酒酔い操縦等の禁止
  • ライフジャケットの着用
  • 狭い水路通過時や水上オートバイ乗船時等における有資格者による自己操縦の義務付け
  • 発航前点検の実施

等についても、引き続き徹底した指導・啓発を行っていきます。