海上保安レポート 2004

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


■特集1 海洋権益の保全とテロ対策

■特集2 海保の救難


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海をつなぐ連携


海上保安庁の業務・体制


海を仕事に選ぶ


海保の新戦力


その他


資料編


 
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不法操業の韓国漁船船長ら逮捕

 平成16年11月18日、巡視船「あさま」は日本の排他的経済水域内で不法操業をしていた1隻の韓国刺し網漁船を捕捉すべく、ヘリコプターMH795とともに、同船を追跡していた。
 ことの始まりは、日本漁船からの通報であった。
「…北緯35度48.71分、東経132度05.28分付近において、韓国刺し網漁船が操業中…。」
 この通報を受け、しょう戒中であった「あさま」は直ちにその駿足を活かして全速力で現場に向かう。「あさま」の船内では、乗組員全員が捕捉や証拠採取のための資器材の準備を整えながら、現場に向かう緊張感が張りつめる。現場に近づくと、上空には海上保安庁ヘリコプターMH795の姿が見えてきた。そしてヘリコプターの下には、1隻の韓国漁船の姿があった。
「いたぞ!」
 「あさま」にMH795から無線が入る。
「本機にて韓国刺し網漁船の操業を現認した。現在同船は漁具を切断し逃走中である。」
 そして「あさま」とMH795の連携による韓国漁船捕捉のための追跡が始まった。
 韓国漁船は、「あさま」とMH795からの再三の停船命令にも応じず、追跡を振り切ろう抵抗する。「あさま」の針路を妨害すべくジグザグ航行を行い、「あさま」が警告弾等による停船命令を発すると、韓国漁船の乗組員はあさまに空き瓶を投げる素振りを見せるなどして反抗姿勢をあらわにし、逃走を続ける。
 追跡は3時間にも及んでいた。
「日没になれば捕捉はさらに困難になる。日没までには勝負を決めるぞ。」
 「あさま」は、韓国漁船の機関を停止させるために煙突目がけて放水していた。とその時、
「ドーン!」
 という衝撃と音が鳴り響いた。韓国漁船が突然「あさま」に対して体当たりをしてきたのだった。避けきれなかった「あさま」は、船首部に損傷を受ける。しかし、直前に現場に到着した大型巡視船「いわみ」が即座に「あさま」に代わり追跡を引き継ぎ、強行接舷を開始する。「いわみ」に船同士が接触する時の振動ときしみが伝わってくる。
 韓国漁船は、大型巡視船による強行接舷に驚きを隠せない様子でついに停船する。追跡する巡視船の数も増え、もう逃げられないと思うのも当然である。
 さらに現場に到着した巡視船「さんべ」も含め、各巡視船から海上保安官が一斉に韓国漁船へと移乗する。
 日が暮れようとしている中、先ほどまでのあわただしい逮捕劇が嘘のように、海上は静けさを取り戻しつつあった。その静けさの中、明確な口調で現場からの報告
「…EZ漁業法*1違反の現行犯で該船船長及び所有者を逮捕した…。」

不法操業中の韓国漁船
▲不法操業中の韓国漁船

韓国漁船を追跡中の巡視船「あさま」
▲韓国漁船を追跡中の巡視船「あさま」