海上保安レポート 2004

●はじめに


■TOPICS 海上保安の1年


■特集1 海洋権益の保全とテロ対策

1 領海警備と海洋権益

2 テロ未然防止のための取組み

■特集2 海保の救難

1 自然災害への対応

2 海保の救助要員


■本編

治安の確保

生命を救う

青い海を護る

災害に備える

海を識る

航海を支える

海をつなぐ連携


海上保安庁の業務・体制


海を仕事に選ぶ


海保の新戦力


その他


資料編


 
はじめに

 平成16年12月、横浜赤煉瓦倉庫の近くに、海上保安資料館横浜館が開館しました。横浜館では、平成13年12月九州南西海域で当庁巡視船と銃撃のうえ自沈し、引き上げられた北朝鮮の工作船が展示されています。長らく海底にあったために赤く錆が浮き、細かく観察すると、特殊な任務を帯びて建造された特異な特徴が浮かび上がってくる船体に目を引きつけられます。
 工作船は、平成15年5月から9ヶ月間、東京お台場で一般公開され話題となりましたが、これを風化させることなく、日本を取り巻く海域の厳しい現実に目を向けていこうという多くの人の意志が、工作船保存募金となって、より長期間の保存に耐える資料館の建造に結実したものです。4月には、見学者数が10万人を超えました。
 我が国を取り巻く海は我が国の国境線でもあり、通常は国民の皆さんの目につくことはありませんが、そこには、いまだ、国境の厳しさが存在しています。まず、海から来るテロリズムがあります。船舶を使ったテロの可能性に対し、私たちは常に備えをもっていなければなりません。また、海は、密輸、密航や密漁などの組織犯罪と結びついた国際犯罪の場になるので、これらに対しても常に目を光らせていなければなりません。
 また、16年には、東シナ海のガス田の開発や我が国最南端の沖ノ鳥島をめぐって世論の関心が高まりました。17年2月には尖閣諸島の魚釣島に設置されていた灯台が海上保安庁所管の灯台になりました。我が国の大陸棚を大きく広げる可能性のある大陸棚の限界画定の調査も本格化してきています。このような中で、我が国の海洋権益の保全が国民的な課題になってきています。
 自然災害が大いに猛威を振るったのも、16年の特徴でした。相次いだ台風による海難などや新潟県中越地震への対応においても、当庁はそのもてる救難能力をフルに発揮して活躍しました。また、災害時と平時とを問わず、海上の交通安全についても、私たちは力を注ぎそのレベルの向上を図っています。このような、ともすると、国民の皆さんにはその全体像の見えにくい海上保安庁の活動をご紹介するのがこの海上保安レポートです。私たちをはぐくんでくれる、日本の海を愛し、慈しむとともに、海の恵みを生かしつつ、日夜たゆまず業務に当たり日本の海を守っていく…そんな私たちの想いが伝われば幸いです。