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外国人不法操業対策
「外国漁船による密漁」というと、誰を傷つけるわけでもなく、また誰かの金品を盗むものとも違うので、関心の薄い方も多いかもしれません。しかし、これは日本の権益を脅かす犯罪なのです。
日本の領海や排他的経済水域では、我が国の貴重な水産資源が枯渇しないよう、水産関係当局や漁業関係者によって、漁期・漁場・漁獲量を制限する等して厳格な資源管理が行われています。
しかしながらせっかく計画的に管理していた水産資源が、悪質な外国漁船により乱獲されてしまうことが、しばしば発生しています。
外国漁船による水産資源の乱獲は、日本の権益を侵害し経済的損失を与えるだけでなく、日本の漁業者が生活を得るための大切な道具である漁具にまで被害を与える等、深刻な問題となっています。
海上保安庁は、これらの悪質な外国漁船による違法操業を根絶し、我が国の領海や排他的経済水域での漁業秩序を維持するため、水産庁等関係機関と連携強化を図り、監視取締りを強化しています。
今日も、国境と接する海上では、海上保安官が様々な危険を省みず違法外国漁船の取締りに励んでいます。
目 標
海上保安庁では、我が国の水産資源の保護及び漁業秩序の維持のため、外国漁船による違法操業等の取締りを厳格に行い、特に、外国漁船が多数操業している日本海、東シナ海等の主要な海域に巡視船艇・航空機を配備し効果的な取締りを実施するなど、摘発水準の向上に努めます。
平成16年の状況
平成16年は排他的経済水域内において韓国漁船5隻、領海内において台湾漁船1隻、ロシア漁船1隻、カンボジア漁船1隻、パナマ漁船1隻をそれぞれ検挙する等、前年に比べ検挙件数は2件増加しています。
平成16年の特色としては、複数の国籍の外国人が関与したカンボジア漁船やロシア漁船が密漁した水産物を我が国の領海内で転載する等、不法取引事犯が発生し、事案の複雑多様化が認められました。
また、違法外国漁船による取締りの際の悪質な抵抗は、平成16年においても依然として続いています。例えば、違反発覚後の逃走を容易とするために、漁船の高速、高性能化を図り、逃走の際にはジグザグ航行により巡視船艇による追跡・捕捉を妨害したり、さらには巡視船艇に体当たりをするといった悪質な事犯が後を絶ちません。時には、違法外国漁船からの妨害により、海上保安官が負傷することもあることから、現場第一線の海上保安官は危険と隣り合わせの中で、日夜、細心の注意を払いつつ違法外国漁船の監視取締りを実施しています。
事例1
領海内侵犯操業の台湾漁船船長を逮捕
平成16年5月14日早朝、沖縄県多良間島北方の我が国領海内において違法操業中の台湾はえ縄漁船を当庁航空機が発見、同船は捕捉を逃れるため蛇行しながら逃走しましたが、現場に急行した平良海上保安署所属の巡視艇の強行接舷*1により捕捉し、同船の台湾人船長を領海内侵犯操業の容疑で現行犯逮捕しました。
▲巡視艇による強行接舷
事例2
領海内転載容疑で韓国人、中国人、ロシア人を逮捕
平成16年12月27日夜間、北海道礼文島沖合の我が国領海内で、ロシア漁船とカンボジア漁船が接舷して漁獲物を違法転載している現場を稚内海上保安部所属の巡視船が発見し、両船船長(ロシア人及び中国人)及びカンボジア漁船に乗船していた主犯格の買付人(韓国人)を領海内転載の容疑で通常逮捕しました。その後の捜査によりロシアの水域でロシア漁船が密漁したズワイガニ約4トンを、我が国領海内で他国の漁船に積み替えることにより、密漁の事実を隠蔽するという、国境を越えた組織的な水産物の不法取引であったことが明らかになりました。
今後の取組み
海上保安庁では、航空機の活用等による新しい取締手法や逃走外国漁船の捕捉制圧手法の研究を進めており、最近においては、これまで捕捉が困難であった逃走外国漁船の捕捉検挙に成功する等、一定の成果をあげています。
組織犯罪対策の観点からも、引き続き国内外の関係機関や地域住民等との連携を進め、これらの不法操業外国漁船に対する厳正な監視取締りを実施していきます。
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