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本編 > 特集 > 3 > 5 密漁対策
現状 近年の国内密漁事犯は、漁業者による許可条件などを無視した違法な水産資源の獲得というものから、暴力団対策法により資金源確保に窮した暴力団の活動資金獲得手段としての性格を帯びたものまで多岐にわたっていますが、不良漁民や暴力団関係者が関与する悪質な事犯を中心に、海上保安庁をはじめとする取締機関の摘発を逃れるため、組織化や供用船舶の高性能化により、更に悪質・巧妙化の様相を呈しています。 ▲密漁中の漁船 これらの事犯は、漁業生産力の発展阻害、漁業秩序・制度の崩壊、水産資源の枯渇といった従来から指摘される問題を引き起こします。またそれだけにとどまらず、莫大な販売利益が暴力団の資金源となったり、密漁の見張り役として少年を密漁グループに勧誘し、犯罪組織への少年参画につながったり、密漁関係者の暗躍が地域の治安の悪化を招くなど、国民の安寧な生活に対する脅威となっています。 また、我が国周辺では多数の外国漁船が確認されています。我が国の排他的経済水域内及び領海内において違法操業を行う外国漁船は依然として後を絶たず、外国漁船により違法に設置された漁具も数多く確認されているほか、最近では、潜水器密漁を行う高速密漁船の活動等が認められています。 このような外国漁船による違法操業は、我が国がその貴重な水産資源を守るため、主権や主権的権利の行使として設定した漁業秩序を著しく乱す行為であり、厳正な対処を必要とする事案であると言えます。 最近の事例 暴力団関係者によるあわび密漁の事件 留萌海上保安部(北海道留萌市)は、地元住民からの暴力団関係者によるあわび密漁情報に基づいて、ぐ犯者、使用車両及び使用船舶の監視を継続的に実施し、平成15年9月22日、暴力団関係者1人を漁業法違反及び北海道漁業調整規則違反容疑で現行犯逮捕しました。 韓国潜水器密漁船による領海内侵犯操業事件 平成15年12月4日夜間、対馬北部沿岸の我が国領海内に侵入してきた韓国潜水器密漁船の動静をしょう戒中の比田勝海上保安署(長崎県対馬市)の巡視艇が隠密裏に捉えました。直ちに監視取締艇を緊急出動させ、同船が操業を開始したのを確認後、巡視艇及び監視取締艇が連携しつつ犯行現場を急襲、現場から高速で逃走を図る同船に、ロープを用いた捕捉資器材を使用して逃走を封じるとともに、減速した同船に海上保安官が移乗し、同船乗組みの韓国人5人全員を領海内侵犯操業の容疑で現行犯逮捕しました。 対策 海上保安庁は、日本各地で頻発する密漁事犯の取締りを積極的に実施してきたところですが、依然として暴力団関係者等による悪質な密漁事犯は後を絶ちません。また、外国漁船による不法操業事犯についても、我が国の排他的経済水域内や領海内である対馬周辺海域、九州南西沖などの海域を中心に依然として活発に行われている実態があります。これらについては、地域住民や地方自治体等からの取締り要請が盛んに行われているところですが、密漁事犯は、取締機関の動向を警戒しつつ、夜間、隠密裏に実施されることが多いため、犯行現場を現認することが難しく、また犯罪の痕跡も残りにくいのが実情です。 このような実情にかんがみ、海上保安庁では、早急に悪質密漁事犯に係る監視取締体制の再構築を図る必要があると考えており、このため、国内外の関係機関との連携強化による情報共有、合同パトロール、地域住民等に対する地道な情報収集・分析活動の強化、高速で逃走する密漁船捕捉のための体制整備、密漁船や密漁者を特定するための現場鑑識体制の強化等について、検討・実施していくこととしています。 |