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本編 > 特集 > 3 > 3 密輸・密航対策
覚せい剤などの薬物や銃器の密輸は、国内の暴力団組織を中心とした犯罪であったものから、国際的な犯罪組織との結託による組織犯罪に変化しています。また、密航も「蛇頭」を代表とする国際的な密航請負組織の関与が顕著となっています。これら不法な薬物などの禁制品や密航者は、一旦国内に入ってしまえばその摘発が極めて難しく、国内の治安悪化の要因として、国民生活にも大きな影響を与える危険性をはらんでいます。 最近の事例 密輸 大麻などを密輸入したカンボジア籍貨物船乗組員を逮捕 平成15年2月、ロシア関係当局からの薬物密輸情報に基づき、新潟海上保安部(新潟県新潟市)は、警察、税関と合同で捜査を開始し、新潟港に入港したカンボジア籍貨物船から大麻樹脂及びあへんを密輸入した容疑でロシア人乗組員を逮捕するとともに、この貨物船の着岸していた岸壁付近にて、この乗組員が密輸入した大麻樹脂約5kg、あへん約4.2kgを発見、押収した。 密航 韓国ルートで密航を図った外国人を摘発 平成15年2月、密航情報に基づき、横浜海上保安部(神奈川県横浜市)は、横浜港に入港した韓国籍貨物船を監視警戒中、不審な複数の外国人が下船し、バスに乗車するのを認めたことから、警察の協力のもと横浜駅東口にてバスから下車した外国人に職務質問したところ、この外国人たちはバングラデシュ人であり、密航者であることを認めたため、不法上陸の容疑で逮捕した。 その後、この密航に関与した船員13人(韓国人8人、中国人5人)を逮捕するとともに、本件発覚直後、同船から逃亡した韓国人船員を指名手配し、韓国海洋警察庁にも情報提供したところ、この韓国人船員は韓国釜山海洋警察署により逮捕された。 対策 密輸・密航などの国際組織犯罪は水際で阻止することが最も効果的であることから、関係行政機関が緊密に連携・協力することにより、有効適切な対策をとることが必要となります。このため、海上保安庁では、犯罪情報の収集・分析能力の強化、監視能力等を向上させた巡視船艇・航空機による監視取締りを実施するとともに、警察、税関等の関係取締機関との情報交換、入港船舶に対する合同立入検査も積極的に実施しています。 また、平成15年7月に政府の薬物乱用対策推進本部で策定された「薬物乱用防止新五か年戦略」においては、平成10年から14年までに水際で押収された覚せい剤の約7割が海上ルートであり、また仕出国・地域別では、中国(香港、マカオを含む。)が約51%、北朝鮮が約35%を占めていることから、新たに「中国、北朝鮮ルート等海路による密輸入への対応の強化」を盛り込み、対応を強化することとしています。特に平成13年12月の九州南西海域における工作船事件については、捜査の結果罪の特定には至らなかったものの、覚せい剤の運搬、受渡しへの関与の疑いが濃厚であることが明らかとなっており、また、北朝鮮籍貨客船「万景峰92」号をはじめとする北朝鮮籍船舶の我が国入出港時の立入検査においても、海事関係法令等各種法令違反の有無のほか、密輸への関与の有無も重要な検査事項として対応しています。 さらに、国際組織犯罪の摘発には諸外国との連携協力も不可欠であることから、韓国、ロシア、中国の海上警備機関とそれぞれ二国間の協力関係を構築し、情報交換、定期協議の開催などを積極的に実施しています。 このほか、現場部署の体制強化を目的として、第十一管区を除く各管区海上保安本部に「国際刑事課」を、第十一管区海上保安本部に「国際犯罪対策室」を設置するとともに、第三管区海上保安本部に「国際組織犯罪対策基地」を設置し、情報収集・分析体制、広域的捜査体制の強化を図っています。 |