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本編 > 特集 > 3 > 4 海上環境事犯対策
現状 海洋環境保全思想の高揚やこれに伴う各種規制・取締り活動の強化により環境を保護するための活動は非常に活発となっている反面、廃棄物の陸上処分場のひっ迫や工場排水、廃棄物などの適正処理に必要な費用の負担逃れといった理由による海域への廃棄物の不法投棄、汚水の不法排出は後を絶たず、海洋環境への影響が懸念されるほか、水産資源の汚染による人体への悪影響、沿岸部の生活環境の悪化など、陸に住む我々にも様々な深刻な影響を与える可能性があります。これらの犯罪は、資源のリサイクルなど環境保全のための制度を円滑に運用する上でも問題であり、断固として許し難い犯罪の一つでもあります。 また、利益を共有する事業者などにより組織的に敢行される事案や暴力団が関与する事案も発生しており、その結果、手口も悪質・巧妙化が進んでいます。さらに最近では、陸上における不法投棄が社会問題化している猛毒の「硫酸ピッチ*1」が夜陰に紛れて海洋投棄された事案を全国で初めて検挙しており、海域においても環境・人体に重大な悪影響を及ぼす事案が発生する蓋然性が高まっていることを再認識させられました。このことからも、このような悪質な廃棄物不法投棄事犯の一層の取締り強化の必要性がますます高まっていると言えます。 ▲沿岸部に不法投棄された廃棄物 最近の事例 「硫酸ピッチ」入りのドラム缶を海洋投棄 平成16年1月27日、鳥羽海上保安部(三重県鳥羽市)は、三重県志摩町沖の熊野灘において、廃液入りのドラム缶を夜陰に紛れて投棄している船舶を認め、浜島町の中古船販売業者を海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反の容疑で検挙しました。 その後、海上保安試験研究センターがドラム缶の内容物について分析したところ、近年陸上における不法投棄が社会問題化している有害物質「硫酸ピッチ」であることが判明しました。現在は、この「硫酸ピッチ」がどのような過程で生成され、廃棄されるに至ったかなど、事案の全容解明に向けて警察と連携しつつ鋭意捜査を進めています。 対策 最近の事例にも見られるとおり、近年、都市部で発生した廃棄物が海域に投棄される蓋然性が高まっていることから、関係機関との連携を強化して悪質事業者に関する情報共有体制を構築するとともに、違反の蓋然性の高い船舶、海域などの重点的な監視を行うなど監視体制の見直し・強化、情報収集活動で得られた情報の分析能力の強化、不法投棄廃棄物の証拠保全措置など犯罪鑑識体制の整備を図り、海上環境事犯発生の未然防止とさらなる事犯の摘発に向け監視・取締りを強化していくこととしています。 さらに、「1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約」(通称「ロンドン条約」)の改正に向けて、「海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律」が改正され、廃棄物等の海洋投棄処分について許可制度が新設されるなど、規制が強化されました。今後同制度に基づき適正な処分が行われるよう、当庁としても厳正な監視・取締りを実施していく必要があります。 |