海上保安レポート 2004
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●長官からのメッセージ

■TOPICS 海上保安の1年

■数字で見る海上保安庁
■海上保安庁の体制・業務
■特集 海の犯罪・海保の対応
■本編

・海上交通の安全のために
・人の命を救うために
・安心できる暮らしと環境を守るために
・国内外関係機関との連携・協力
・海上保安庁を支える装備等
・海上保安官になるために


●海上保安Q&A
●船艇紹介
●地方探訪
●航空機の歴史


本編 > 特集 > 2 > 6 国際化への対応


 昭和60年代から平成の時代に入り、民主化の波による冷戦構造の終えん、自由貿易の進展、情報化社会の加速など、国際的な情勢は大きく変化しました。経済発展を続ける我が国においても平成のバブル経済による好景気を経験したものの、その後不況の時代に突入するといったこれまでに経験したことのない時代となりました。
 海上における治安の問題も国際化がさらに進展するとともに、新たな課題が数多く発生した時期でもありました。
 平成元年にパナマ籍貨物船「EB.キャリア」において発生した、フィリピン人乗組員8人が英国人士官に対し待遇改善を求めた船内暴動事件では、EB.キャリアからの救援要請が直接当庁に寄せられ、国際的視点での治安確保が求められた顕著な事例です。
 覚せい剤などの薬物、銃器の密輸を見ても、船舶を利用した大量密輸事件が頻発し、国内はもとより国際的な連携・協力による取締りの必要性も格段に向上していきました。
 平成4年には、高速増殖炉「もんじゅ」などの運転に必要なプルトニウムの我が国への海上輸送に対して、国際テロ集団によるプルトニウム奪取の脅威、反核・環境保護団体による妨害活動から輸送船を保護するための護衛活動を行っています。
 領海警備も外国漁船による領海侵犯不法操業、外国海洋調査船による我が国周辺海域における調査活動に対する監視・警戒、取締り活動が中心であったものに加えて、平成2年8月の「台湾地区スポーツ大会」聖火リレーを行う台湾船が、巡視船艇の警告・指導にも関わらず尖閣諸島周辺の我が国領海内に侵入するといった事案が発生したほか、平成8年の国連海洋法条約の発効以降も、台湾・香港などの活動家による領有権主張活動が活発となり、これら活動家の乗船する船舶が尖閣諸島周辺の我が国領海内に侵入し領有権主張活動を行うといった事例も頻発するようになり、我が国の権益確保のための対応をより一層充実していく必要も生じていきました。
聖火リレーを行う台湾船
▲聖火リレーを行う台湾船
尖閣諸島周辺
 さらに、密航事犯を見れば、これまで韓国人の比率が高かったものが、我が国の経済的優位性に着目し、平成2年以降中国人の比率が増加するとともに、その手口も「蛇頭」と呼ばれる国際的な密航請負組織の介在により悪質・巧妙化が進展する状況となりました。
 このように海上犯罪も海外からの犯罪の流入が顕著となり、「国際化」の波がこの時期に押し寄せる状況となりました。
 このほか、これまで海洋汚染事案と言えば、船舶からの油の排出や工場排水などによる公害事件がその中心的存在でしたが、各種水質規制が効を奏し、徐々にその発生件数が減少する一方、国際的な環境問題への着目や、廃棄物の不法投棄の横行により、引き続く厳正な監視取締りと併せて環境保全対策についても対応が求められるようになりました。全国各地に見られる廃船への対策として「廃船指導票」を活用した原因者による処理の促進策もその一端といえます。