平成30年9月4日に発生した関西国際空港連絡橋へのタンカー衝突事故を受け、船舶交通の安全確保の観点から、平成31年1月31日より、同空港周辺海域での法規制の運用を開始するとともに、これ以外の海域における同種事故の再発防止のための対策を検討してきました。
検討に際しては、各海域における錨泊実態や地形、海上施設の種別、社会的影響などを考慮し、平成31年4月、関西国際空港周辺海域に加え、全国各海域において40箇所を重要施設(交通やライフライン等の断絶、代替手段がないことによる不利益等をもたらすおそれがある施設)として選定し、これらの周辺海域での荒天時における錨泊の自粛措置をとりました。
令和元年の台風シーズンにおいて、これら全国41箇所の重要施設に対する走錨等に起因する事故は発生せず、一定の効果が認められました。
一方で、房総半島台風では、これら41箇所以外の施設に対して走錨事故が発生したことから、事故防止対策の強化等について、有識者検討会において更なる議論が行われました。この検討会の報告書では、湾外への避難の推奨や荷役への影響に伴う荷主への協力要請、国際戦略港湾の関連施設等の重要施設の追加、走錨事故を防止するためのガイドラインの作成・周知、施設補強、適切な錨地・錨泊方法の選定に関する支援等、ソフト・ハード両面の対策を一体的に推進することが重要との提言がなされています。
これらの提言を踏まえ、海上保安庁では引き続き関係機関・団体と連携し、官民一体となって走錨事故防止対策を推進していきます。
重要施設周辺海域における対応
検討会の様子
【対応策】
I 監視・指導強化海域…レーダー、AIS、カメラ等による監視体制強化及び無線等による注意喚起
II 重点指導海域…Iに加えて、強力な指導を行う海域を設定して巡視船艇による直接指導などにより、重点的に警戒する態勢を確保
III 規制海域…I及びIIに加えて、港則法や海上交通安全法による規制