古来、世界の国々は海から様々な恵みを受け、成長しています。島国である我が国もそのひとつで、広大な領海や排他的経済水域等を有する世界屈指の海洋国家であります。海上保安庁では、この広大な海の安全と治安の確保を図るため、日夜、あらゆる現場で業務を遂行しています。

近年、我が国周辺海域では、様々な変化が生じ、厳しい情勢が続いています。特に、尖閣諸島周辺海域では、中国公船による領海への侵入が繰り返され、日本海の大和堆周辺海域では、外国漁船による違法操業が後を絶ちません。

このような中、「海上保安体制強化に関する方針」（平成28年12月海上保安体制強化に関する関係閣僚会議決定）に基づき、海上保安庁の法執行能力、海洋監視能力、海洋調査能力の強化を図る観点から、体制の整備を推し進めています。

また、海上保安庁は、国内はもとより世界にも目を向け、「自由で開かれたインド太平洋」の実現という政府方針の下、法の支配の体現者としての範を示しつつ、諸外国の海上保安機関との連携協力や能力向上支援を行っています。

さて、海上保安レポート2020では、「海上保安庁、新時代」と題した特集を組みました。新しい時代「令和」となった今、体制の飛躍的な増強や新たな採用制度の創設、これまでに類を見ない世界規模での国際連携などを推進し、あらゆる事象に立ち向かう海上保安庁の新時代を紹介しています。

元号の「令和」は、万葉集の「梅花の歌32首」から引用されたものですが、海上保安庁の徽章もまた、「梅」です。新時代においても、「梅」の徽章を胸に、海上保安庁全職員が一丸となり、国民の皆様の安全・安心をしっかりと守っていきます。

本書をお読みになり、海上保安庁に対するご理解が少しでも深まれば幸いです。

令和2年5月