海上保安レポート 2015

はじめに


TOPICS 海上保安の一年


特集 離島周辺や遠方海域における海上保安庁の活躍


海上保安庁の任務・体制


■本編

1 治安の確保

2 生命を救う

3 青い海を守る

4 災害に備える

5 海を知る

6 交通の安全を守る

7 海をつなぐ


目指せ! 海上保安官


語句説明・索引


図表索引


資料編

5 海を知る > CHAPTER II 海洋情報の提供
5 海を知る
CHAPTER II 海洋情報の提供

海洋は、海運や水産業、資源開発、マリンレジャー等様々な目的で利用されており、それぞれの目的によって必要となる情報が異なります。海上保安庁では、海洋調査により得られた多くの海洋情報を基に、それぞれの目的にあわせ、ユーザーの利用しやすい形での情報提供に努めています。

平成26年の現況
1 海上の安全確保のために

海上保安庁では、船舶の安全航行に不可欠な海図や水路書誌等の作製・刊行を行っています。平成26年には、海洋調査により得られた最新データを基に、紙海図(新刊6図、改版79図)や水路書誌(新刊6冊、改版13冊)等を刊行し、電子海図表示システム(ECDIS)で利用できる航海用電子海図(ENC)は、新刊セルを13セル刊行しました。


水路図誌等の種類と刊行版数(平成26年末現在)
水路図誌等の種類と刊行版数(平成26年末現在)
ルーティングガイド刊行
ルーティングガイドとは?
ルーティングガイドとは?

東京湾や伊勢湾等船舶交通がふくそうする海域では、航行時に注意すべき事項が多々あり、スペースの都合上、海図に記載できない情報もあります。そこで、海上保安庁では、外国船舶の海難事故防止のため、交通ルールを英語で記載した我が国初の伊勢湾ルーティングガイドを平成27年3月に刊行しました。

このルーティングガイドは、デュアルバッジ海図(日英共同刊行)として、英国海洋情報部の販売網でも販売しています。

今後は、東京湾、瀬戸内海、関門海峡においても刊行していく予定です。

2 海洋情報の利活用活性化のために
日本海洋データセンター〈JODC〉
日本海洋データセンター〈JODC〉

海洋情報は、船舶の航行の安全や、資源開発、マリンレジャー等の様々な目的で利用されています。このため、ユーザーが目的に応じて、利用しやすい形で海洋情報を提供することが非常に重要となっています。

海上保安庁では、日本海洋データセンター(JODC)として、海上保安庁が独自に収集した情報だけでなく、国内外の海洋調査機関によって得られた海洋情報を一元的に収集・管理し、インターネット等を通じて国内外の利用者に提供しています。また、国の関係機関等が保有する様々な海洋情報の所在について、一元的に検索できる「海洋情報クリアリングハウス(マリンページ)」を運用しています。


海洋情報クリアリングハウス
海洋情報クリアリングハウス

さらに、国、地方自治体等が海洋調査で取得した情報をはじめ、海洋の利用状況を把握するうえで必要となる自然情報(海底地形や海流等)、社会情報(訓練区域や漁業権区域等)等を一元的に管理し、インターネット上でビジュアル的に重ねあわせて閲覧できる、海洋台帳を運用しています。最近では、海洋再生可能エネルギーへの期待が高まる中、海洋台帳は、洋上風力発電施設の適地選定等にも役立てられています。


海洋台帳のイメージ
海洋台帳のイメージ

来島海峡潮流情報
来島海峡潮流情報

平成26年6月20日から、国内有数の急潮流である来島海峡を対象に、シミュレーションによる詳細な潮流分布を図示する「来島海峡潮流情報」の提供を開始しました。「来島海峡潮流情報」は、海峡全域の潮流の向きや速さがわかるので、海難事故の未然防止や経済的な運航に利用されることが期待されています。


今後の取組み

引き続き、海洋調査によって得られた最新データを基にして、海図等の水路図誌を刊行していきます。

また、JODC海洋情報クリアリングハウス(マリンページ)海洋台帳を適切に管理・運用するとともに、政府機関や関係団体等との連携を一層強め、掲載情報の拡充や機能の強化に努め、目的にあわせて利用しやすい海洋情報の提供を推進していきます。

日本の「海」について

四方を海に囲まれた我が国は、国土面積の約12倍、約447万km2にも及ぶ領海EEZを有しています。

また、平成24年4月国連大陸棚限界委員会からの勧告により、我が国の国土面積の約8割にあたる大陸棚の延長が認められました。これを受け、平成26年10月には我が国初の延長大陸棚が設定されました。


我が国周辺の海域
我が国周辺の海域

領海・排他的経済水域等模式図
領海・排他的経済水域等模式図
領海と領海基線等の模式図
領海と領海基線等の模式図

国連海洋法条約に基づく沿岸国の管轄海域は次のとおりです。


1 領海

沿岸国は、領海基線(7.参照)から12海里を超えない範囲で、自国の主権が及ぶ水域として「領海」を設定することができます。沿岸国の主権は、領海の上空、海底及び海底下にまで及び、沿岸国は漁業や資源採掘の独占権を有します。また、全ての国の船舶は、無害通航権が認められています。

*:沿岸国の平和、秩序または安全を害しない限り、沿岸国に妨げられることなくその領海を通航する権利。


2 接続水域

沿岸国は、領海に接続する水域で、領海基線から24海里を超えない範囲で、「接続水域」を設定することができます。同水域では、自国の通関、財政、出入国管理、衛生に関する一定の規制を行うことができます。


3 排他的経済水域(EEZ)

沿岸国は、領海の外側で領海基線から200海里を超えない範囲で「排他的経済水域(EEZ)」を設定することができます。同水域では、沿岸国に対して、一切の漁業及び鉱物資源に対する排他的な主権的権利と海洋汚染を規制する権限等が認められています。


4 公海

いずれの国のEEZ領海若しくは内水またはいずれの群島国の群島水域にも含まれない海洋のすべての部分です。特定の国の主権に属さず、世界各国が共通に使用することができます。


5 深海底

いずれの国の管轄権も及ばない海底及び海底下です。人類共同の財産であるとされています。


6 大陸棚

沿岸国は、領海基線から200海里までの海底及び海底下を「大陸棚」とするとともに、海底の地形・地質が一定の条件を満たす場合、国連の勧告に基づき、200海里を超えて大陸棚の限界を設定することができます。大陸棚では、沿岸国に対して、天然資源の開発に係る主権的権利が認められています。


7 領海基線

領海の幅を測る基準となる線です。通常は、海岸の低潮線(干満により、海面が最も低くなったときに陸地と水面の境界となる線)ですが、海岸が著しく曲折しているか、海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所には、適当な地点を結んだ直線を基線(直線基線)とすることができます。


8 内水

領海基線の内側の水域です。沿岸国は領海と同様に主権を行使できます。外国船舶の無害通航権は認められていません。(直線基線によって新たに内水になった水域では、無害通航権が認められています。)


9 低潮高地

海面が最も低くなった時には水面上にあるが、満潮時には水面下にある自然に形成された陸地です。低潮高地の全部または一部が本土または島から12海里を超えない距離にあるときは、その低潮線は、領海基線として用いることができます。