犯罪情報技術解析官による解析対象物100件達成
第六管区海上保安本部
「電子機器に保存された電子データは嘘をつかない、事実を正直に物語る。」パソコン、携帯電話等の電子機器が普及し、船舶に搭載された航海計器類も電子化されていく状況の中、海上保安庁では、平成22年10月から管区本部に犯罪情報技術解析官を配置し、犯罪捜査の過程で、電子機器に保存された電子データを解析したり、削除データを復元させて証拠化する業務に取り組んでいます。第六管区では瀬戸内海・宇和海を担任海域としており、大型船から漁船、プレジャーボートまで通航船舶が多いため、船舶事故が多発しており、また、豊富な漁場が多いことから密漁等の事件も多い状況です。これらの事件・事故において、電子機器に保存された電子データの解析を実施することにより、曖昧な人の記憶や感覚に勝る確実な事実を導き可視化しています。解析作業は、高度な技術と繊細な感覚、根気が必要であり、取扱いを一つ間違えば海上保安官自らの手で貴重な証拠となりうる電子データを消滅させる危険性と常に向き合っているのも事実です。
海上犯罪での解析の実態として、船舶に搭載された航海機器のデータ解析が中心となっていますが、第六管区は解析実績が全国で一番多い管区であり、この三年間で犯罪情報技術解析実績が100件となりました。当庁初となる解析第一号の事案は、貨物船と漁船の衝突海難で、不幸にも一人乗組みの漁船船長が死亡したことから、死亡した船長の供述を証拠化できない中、残された航海計器の保存データを解析することで事故当時の状況を明らかにし、事案の全容を解明したものでした。
乗組員が発生当時の状況を鮮明に記憶していなくても、解析により事故当時の船舶の状況、レーダー映像、船橋での会話を解析、再現することで事実関係を明らかにすることができます。
第六管区では、管内16の保安部署で取り扱う事件・事故に対し、管区本部に配置された犯罪情報技術解析官が現地に赴いて対応していますが、その数は年々増加傾向にあり、今後、電子データの解析を必要とする事案は更に多くなると予想しています。
携帯電話の解析作業 |