海上保安庁では、日々、「正義」の信念を持ちつつ、法執行機関として海上の治安の維持を図っているほか、「仁愛」の情と献身の勇気を持って、人を守り、人に寄り添いながら、人命救助や、自然災害にも適切に対応しています。
我が国は、国土面積の約12倍に相当する領海と排他的経済水域(EEZ)を有しており、海上保安庁は、この広大な海で、日々、昼夜を分かたず様々な業務にあたっています。海上保安庁では、密輸・密航や密漁等の犯罪の取締りには、法執行機関として「正義」の信念を持ちつつ、適切に対応し、海難や自然災害等が発生すれば、国民の皆様の人命・財産の保護のため、海上保安官は、我が身を顧みず、心を尽くした対応にあたっています。
大規模な海難などが発生すれば、海上保安庁の活動に世の中の注目が集まりますが、日々の海上保安庁の活動は海上で行われることが多いことから、国民の皆様の
目に留まることは少ないものと思います。ここでは、広く皆様の目に留まるような活動ではないものの、日々、全国の海上保安官が地域の方々に寄り添いながら命を守り、心や暮らしを支えている姿をご紹介します。
1.台風26号による伊豆大島での土砂災害への対応(第三管区海上保安本部)
平成25年10月に発生した台風26号の影響により、伊豆大島(東京都大島町)では、大規模な土石流が発生しました。この土石流は大島町の集落を飲み込み、大規模な被害をもたらすとともに、多数の死者・行方不明者が発生しました。
海上保安庁では、発災後、速やかに巡視船・航空機を現地に向かわせ、被害状況の調査を実施し、現地対策本部等に対して情報を提供するとともに、巡視船・航空機により医師や救援物資を現地に搬送するなど、現地の要望も踏まえながら対応にあたりました。
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航空機に乗り込む医師等 |
巡視船に救援物資を積み込む海上保安官 |
また、陸上部では、警察、消防、自衛隊などが懸命な行方不明者の捜索活動を続ける中、土石流が海にまで達したことから、第三管区海上保安本部は、行方不明者のご家族の想いを背負いながら、巡視船・航空機による海上捜索を実施するとともに、潜水士・特殊救難隊による潜水捜索を実施しました。
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海岸付近を捜索する潜水士と巡視船 |
潜水士・特殊救難隊による潜水捜索では、土石流により流された大量の泥や流木等により、視界のほとんどが奪われる中、懸命な捜索活動を実施しました。
これらの捜索活動の結果、伊豆大島周辺海域で2名のご遺体を揚収しました。
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港内を捜索する潜水士 |
2.東日本大震災への対応(第二管区海上保安本部)
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潜水捜索の状況 |
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被災地の方々が見守る中での捜索 |
東北地方太平洋沿岸を中心に未曾有の被害をもたらした東日本大震災では、発災当初から、海上保安庁一丸となって、人命救助を最優先に総力を挙げ、被災された多くの方々を救助しました。海上保安庁では、今もなお、地元からの要望を踏まえつつ、津波により発生したがれきが未だ残る海や、福島第一原子力発電所付近海域、また、時には凍てつく海の中、巡視船艇による捜索や潜水士による潜水捜索など、被災地の方々の想いに応えるべく捜索活動を続けています。
また、大震災から3年が経過した平成26年3月にも、11日を中心に地方自治体やご家族からの要望に基づく潜水捜索や警察等関係機関との合同捜索を実施しました。
3.地元関係機関との連携
海上保安庁では、自らが人命救助、災害対応にあたるだけでなく、陸上で活動する他機関と機動的に連携することにより、地域の方々を支える活動も行っています。
1 警察機関との連携(第七管区海上保安本部萩海上保安署)
山口県萩市では、平成25年7月26日から降り続いた豪雨の影響による灌水や土砂崩れのため、主要道路が封鎖され、地元警察の捜索救助活動にも支障が出る中、萩海上保安署では、同月28日、地元警察署からの要請に基づき、孤立した地域の行方不明者の捜索や孤立住民の救助等にあたる警察官20名を巡視艇「はぎなみ」に乗船させ、近隣の港まで搬送しました。
その後、搬送された警察官により、床上冠水で2階に取り残された一人暮らしのご老人などが救出されました。
2 消防機関との連携(第八管区海上保安本部宮津海上保安署)
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巡視艇のゴムボートで警察官を搬送 |
平成25年9月15日、京都府宮津市では、台風18号の影響により発生した土砂崩れに女性(46歳)が巻き込まれて負傷しました。女性は、地元消防に救助を求めましたが、土砂崩れによる道路寸断のため、救急車が現場に到着できない事態であったことから、宮津海上保安署では、地元消防からの要請に基づき、巡視艇「あまかぜ」により消防職員、医師計7名を現場付近の岸壁まで搬送しました。
その後、道路は復旧し、女性は救急車で最寄りの病院に搬送されました。